- 三度目の挑戦で成功 平昌冬季五輪 競技会場の全貌 ~Mountain ClusterとCoastal Cluster~
オリンピック・スタジアムで開催された平昌冬季五輪開会式 出典 POCOG
平昌冬季五輪開会式 聖火を点灯するキム・ヨナ 出典 POCOG
平昌冬季五輪開会式イベント 出典 POCOG
首都ソウルから東に約130キロ、韓国の北東部に位置する平昌は、2003年大会と2007年大会に立候補したが失敗し、2011年大会にようやく誘致に成功した。
平昌が属する江原道(Gangwon-do)は、日本でも大人気となり、“韓ドラ”のシンボルとなった「冬のソナタ」の撮影地になったことで知られている。
平昌は、ジャガイモやソバの畑が広がる豊かな自然に包まれた山麓地域で、夏は避暑地、冬はスキーリゾートとして韓国国内から多くの観光客が訪れる。ソウルからは高速バスで約3時間、2017年末にはソウルと江陵を結ぶ高速鉄道KTX(Korea
Train eXpress)が開通し、今年初めからは仁川(Incheon)国際空港と競技会場エリアを約2時間で結ぶ列車の運行が始まった。
韓国は、平昌五輪の開催で、、1988年のソウルで開催された夏季五輪に引き続き、二回目の五輪開催国となる。五輪大会は今回の平昌冬季五輪、2020年の東京夏季五輪、2022年の北京冬季五輪と、三回連続でアジアでの開催となった。
韓国では、最も人気のあるスポーツは、伝統的にサッカーや野球だが、冬季スポーツではスケートが最も盛んである。ソチ五輪大会では、金メダル3、銀メダル2、銅メダル2をスピード・スケートやショート・トラック、フィギア・スケートの競技で獲得している。
平昌五輪は、2018年2月9日から25日の17日間に渡って、冬季五輪では過去最多の92カ国・地域から2900人の選手が参加し、これも過去最多の15競技、102種目が行われる。
- 膨張した五輪開催経費
- 五輪を開催する都市は、毎回、競技場整備に膨大な経費を投入する。 平昌冬季五輪の例外ではない。
平昌五輪では、12か所の競技場とオリンピック・スタジアム(Olympic Stadium)とメダル・プラザ(Medal Plaz)を整備した。
この内、6か所の競技場は新設し、6か所の競技場は既設の施設を改修して使用した。オリンピック・スタジアムとメダル・プラザは仮設施設として整備した。
開会式や閉会式を開催するオリンピック・スタジアムは、仮設施設にも拘わらず、建設費は1477億ウォン(約147億円)、半額は韓国政府が負担した。 さらに開会式・閉会式のセレモニー開催予算、700億ウォン(約70億円)が加わる。
韓国国内では、オリンピックとパラリンピックの開会式・閉会式など4回のイベントで使用するだけなのに、巨額の経費で整備するのは無駄遣いだという批判が出た。
Alpensia ski resortの建設には、約15億ドル(約1兆6600ウォン 約1660億円)が投入された。
政府や開催都市、組織委員会はコスト削減に努めたとしているが、膨れ上がった平昌五輪の施設整備費は強い批判が浴びせされている。
また平昌五輪組織委員会の予算も破たんの危機に陥った。
平昌五輪組織委員会は2017年6月、これまでの2兆2000億ウォン(約2200億円)の予算規模では五輪開催が困難として6000億ウォン(約600億円)の追加支援を韓国政府に要請した。
また首都ソウルから遠く離れた開催地に観客や選手、大会関係者を輸送するために高速鉄道KTXを建設したが、総工費は約3兆8000(約3380億円)、
こうしたインフラ関連経費も含めると、平昌冬季五輪の開催経費は、約14兆ウォン(約1兆4000億円)にも達しているとされている。
2011年に招致に成功した時に立候補ファイルで示した開催経費は、8兆8000ウォン(約8800億円)、5兆ウォン(約5000億円)も膨れ上がっている。
韓国の市民からは、「残るのは「国民の負担ばかりが膨らむ」「能力もないのになぜ五輪を誘致した」などの批判が沸き上がっている。
- “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌五輪
- 冬季五輪大会後、競技施設の年間維持費は210億4900万ウォン(約21億円)になるという推定が明らかになった。施設運営収入を大幅に上回る施設維持費が必要となり、開催地の江原道や自治体の年間赤字は165億ウォン(約16億5000万円)に達することが分かった。
平昌に建設されたAlpensia Sliding Centreを大会後も維持するためには、年間31億6600万ウォン(約3億1000万円)がかかるとしている。しかし、この施設で得られる収入は7000万ウォン(約700万円)で、夏季は収入がないし冬季でも利用客がほとんど期待できないとされている。この施設を所有していることだけで約30億ウォン(約3億円)近くを負担しなければならないという。文化体育観光部の関係者は「スライディングセンターは撤去する方が得策」だとしているとしている。
江陵市(Gangneung)エリアに整備された競技施設の内、オリンピック・パークにあるアイスアリーナ(新設)とカーリングセンター(既設)と関東大学校の中に建設されたアイスホッケー場(Kwandong
Hockey Centre)(新設)は五輪後の利用計画のめどが示された。しかし、江陵アイスホッケー・センター(Gangneung Ice Hockey
Centre)(新設)や江陵オーバル(Gangneung Oval)(新設)、平昌(PyeongChang)エリアの旌善アルペン・センター(Jeongseon
Alpine Centre)(新設)は、未だに検討中で利用計画のめどが立っていない。
1万席の観客席を備える江陵アイスホッケー・センターは、毎年の施設維持費だけで29億ウォン(2億9000円)となるという。
こうした競技施設を、数十年に渡って維持するには、施設維持費だけでなく修繕費も加わって、建設費の数倍の経費が必要となるとされている。
平昌五輪も、“負のレガシー”(負の遺産)を抱えるのは必至である。
- Mountain ClusterとCoastal Cluster 二つのゾーンに競技会場を整備
- 平昌(PyeongChang)は、ソウルから130km離れた江原道(Gangwon-do)に位置する約44,000人が住む地区である。大会を開催する競技場は、平昌地区にあるMountain
Clusterと隣の江陵市(Gangneung 約230,000人)にあるCoastal Clusterの二つのエリアに整備された。
Mountain Clusterには、2つの競技場、Coastal Clusterには4つの競技場、合わせて6つの競技場が建設された。
Mountain Clusterでは、ランドマークの五角形のオリンピック・スタジアムに目が引き付けられる。このスタジアムは、五輪史上初の仮設スタジアムだ。
オリンピック・スタジアムの隣にはメダル・プラザがあり、五輪のメダルの授与式が行われると共に、文化的なイベントが開催される。
競技会場は、Alpensiaエリア,、Yongpyongエリア、Jongseonエリア、そしてBokwangエリア.に整備され、ジャンプ台は既設のAlpensiaにある施設を使用し、Sliding
Centreは新たに建設した。
Coastal clusterでは、すべてのアイススケート種目が5つの競技場で開催される。1998年に建設されたカーリング場がある江陵市(Gangneung)の北部地域を整備し、新たにアイス・アリーナやスピード・スケート場、アイス・ホッケー場の3つのスケートリンクを建設し、カーリングと合わせて江陵オリンピック・パーク(Gangneung
Olympic Park)として整備した。さらにホッケー競技場を江陵市(Gangneung)南部にあるカトリック関東大学校(Kwandong
Catholic University)に新しく建設した。
選手村は平昌(PyeongChang)のMountain Clusterと江陵市(Gangneung)の Coastal clusterの二か所に建設され、この内、平昌(PyeongChang)の選手村は15階の建物が8棟建設された。江陵市(Gangneung)にはメディア用ホテルも建設された。
出典 POCOG PyeongChang2018
- 平昌マウンテン・クラスター (PyeongChang Mountain Cluster)
- 資料 PyeongChang2018 Architecture of the Games 東亜日報
平昌オリンピック・パーク 出典 PyeongChang2018
平昌オリンピック・パーク 出典 POCOG PyeongChang2018
- PyeongChang Olympic Stadium(平昌オリンピック・スタジアム)
- PyeongChang Olympic Stadium(平昌オリンピック・スタジアム)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: PyeongChang Olympic Plaza
Olympic Games: Opening and Closing ceremonies
Paralympic Games: Opening and Closing ceremonies
Type: Temporary
Built: 2017
Capacity: 35,000 Seats
建設費:1477億ウォン(約147億円)
平昌オリンピック・スタジアム 出典 POCOG PyeongChang2018
出典 IOC PHOTO
- PyeongChang Medal Plaza(平昌メダル・プラザ)
- Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: PyeongChang Olympic Plaza
Olympic Games: Medal ceremonies
Paralympic Games: Medal ceremonies
Type: Temporary
Built: 2017
Size: 1,267 square meters
平昌メダル・プラザ 出典 IOC News
- Alpensia Ski Jumping Centre(アルペンジア・スキージャンプ・センター)
- Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Ski Jumping, Nordic Combined, Snowboard (Big Air)
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 2009
Renovated: 2015-2017
Capacity: 11,000 Seats + 2,500 Standing
Slopes for Competitions: LH (125m), NH (98m)
Slopes for Practice: K60, K35, K15
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
- Alpensia Sliding Centre(アルペンジア・スライディング・センター)
- Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Bobsleigh, Skeleton, Luge
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2013-2017
Capacity: 1,000 Seats + 6,000 Standing
Course Length: 1,376.38m (Bobsleigh / Skeleton) / 1,344.08m (Luge Men)
/ 1,201.82m (Luge Women / Double)
Altitude Difference: 116.32m (Bobsleigh / Skeleton) / 117.12m (Luge Men)
/ 95.62m (Luge Women / Double)
Average Slope: 9.48% (Bobsleigh / Skeleton) / 9.69% (Luge Men) / 8.97%
(Luge Women / Double)
建設費:1144億ウォン(約114億円)
Alpensia Sliding Centre 出典 POCOG PyeongChang2018
Alpensia Sliding Centre 出典 Olympic Channel/IOC
Bobsleigh 出典 Olympic Channel/IOC
Skeleton 出典 Olympic Channel/IOC
Luge 出典 Olympic Channel/IOC
- Alpensia Cross-Country Centre(アルペンジア・クロスカントリー・センター)
- Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Cross-Country Skiing, Nordic Combined
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2009, 2015-2017
Capacity: 4,500 Seats + 3,000 Standing
Course length: 3.75km / 3.3km / 2.5km / 2km
Course Width: 8m
Altitude Difference: 54m (751m~805m)
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
- Alpensia Biathlon Centre(アルペンジア・バイアスロン・センター)
- Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Biathlon
Paralympic sports: Para Biathlon, Para Cross-Country Skiing
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2007, 2015-2017
Capacity: 4,500 Seats + 3,000 Standing
Course length: 4km / 3.3km / 3km / 2.5km / 2km / 1.5km
Course Width: 8m
Altitude Difference: 47m (749m~796m)
Shooting Range: 82.5 × 50m
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
- Phoenix Snow Park (P,C)(Bokwang Snow Park:フェニックス スノーパーク:普光スノーパーク)
- Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Freestyle Skiing, Snowboard
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1995
Renovated: 2015-2017
Capacity: 10,200 Seats + 7,800 Standing
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
- Yongpyong Alpine Centre(ヨンピョン・アルペン・センター:龍平リゾート)
- Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Alpine Skiing (Slalom & Giant Slalom)
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2016-2017
Capacity: 2,500 Seats + 3,500 Standing
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 Olympic Channel/IOC
Slalom 出典 IOC PHOTO
出典 Olympic Channel/IOC
- Jeongseon Alpine Centre(チョンソン・アルペン・センター:旌善アルペン・センター)
- Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Alpine Skiing (Downhill, Super G & Combined)
Paralympic sports: Para Alpine Skiing, Para Snowboard
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 3,600 Seats + 2,900 Standing
建設費:2064億ウォン(約206億円)
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 Olympic Channel/IOC
Downhill 出典 IOC PHOTO
Downhill 出典 IOC PHOTO
- 江陵コースタル・クラスター(Gangneung Coastal Cluster:カンヌン・コースタル・クラスター)
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 POCOG PyeongChang2018
- Gangneung Hockey Centre(カンヌン・ホッケー・センター:江陵ホッケー・センター)
- Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Ice Hockey
Paralympic sports: Ice Sledge Hockey
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 10,000
建設費:1123億ウォン(約112億円)
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 POCOG PyeongChang2018
- Gangneung Oval(カンヌン・オーバル:江陵オーバル)
- Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Speed Skating
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 8,000
建設費:1324億ウォン(約133億円)
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
- Gangneung Ice Arena(カンヌン・アイス・アリーナ 江陵アイス・アリーナ)
- Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Short Track Speed Skating, Figure Skating
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2016
Capacity: 12,000
建設費:1340億ウォン(約134億円)
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
- Gangneung Curling Centre(カンヌン・カーリング・センター:江陵カーリング・センター)
- Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Curling
Paralympic sports: Wheelchair Curling
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2015-2017
Capacity: 3,500
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
- Kwandong Hockey Centre(クァンドン・ホッケー・センター:関東ホッケー・センター)
- Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: –
Olympic sports: Ice Hockey
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 6,000
建設費:627億ウォン(約63億円)
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 Olympic Channel/IOC
出典 Olympic Channel/IOC
- 選手村 IBC メディア・ホテル
- PyeongChang Olympic Village
15階建ての建物 18棟 3894人収容
2015年7月着工 2017年12月完成 2018月2月1日開村式
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 POCOG PyeongChang2018
Gangneung Olympic Village
22~25階建ての建物 9棟 2902人収容
2015年7月着工 2017年12月完成 2018月2月1日開村式
出典 POCOG PyeongChang2018
出典 POCOG PyeongChang2018
International Broadcasting Center(IBC)(国際放送センター)
Location: PyeongChang Mountain Cluster, Alpensia resort
Construction Start: December 2015
IBC Shell Completion: May 2017
IBC Handover to OBS: 5 June 2017
Site Area: 122,410.02 sqm
Gross Floor Area: 51,024.15 sqm
Functional Space Area
OBS and RHB broadcast space: Approx. 34,000 sqm
POCOG & OBS Offices: 5,765,54 sqm
Common Services: 1,812.04 sqm
江陵メディア・ホテル(Gangneung Media Village)
五輪後の利用計画:民間企業に売却 2018年内に入居開始
売却先:韓国土地建物不動産
- オリンピック・パーク リンピック・プラザ
- 江陵オリンピック・パーク(Gangneung Olympic Park)

平昌オリンピック・プラザ(PyeongChang Olympic Plaza)

- Venue Data



出典 PyeongChang2018/Architecture of the Games