- 「女性理事は会議に時間かかる」 森会長が蔑視発言か―東京五輪
女性蔑視発言で辞意を表明した森喜朗組織委員会長 出典 東京五輪 2021年2月12日
- 2021年2月3日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は東京都内で開かれた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、スポーツ庁の主導により競技団体で女性理事の任用が進められていることに触れ、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。誰かが手を挙げるとみんな発言したがる」と話した。女性蔑視とも受け取れる発言で、今後議論を呼ぶ可能性がある。
スポーツ庁が示した競技団体が守るべき指針のガバナンス・コードでは、女性理事40%以上を目標として掲げている。森会長は、「発言の時間もセーブしておかないと、なかなか終わらないので困る」という関係者の話も披露した。組織委については「(女性役員は)7人いるが、みなさんわきまえておられる。大きな場所を踏んでこられて、的を射た話をされる」と述べた。
- 相次ぐセクハラ発言 放言のち謝罪
- この日の評議員会はオンライン会議で、記者にも公開されていた。森会長は「テレビがあるからやりにくいんだが」と前置きしたうえで、「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」とも発言。「女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困ると言っておられた。だれが言ったとは言わないが」などと語った。その場にいたJOCの評議員会のメンバーからは笑い声もあがった。
また、「私どもの組織委員会に女性は7人くらいか。7人くらいおりますが、みなさん、わきまえておられて」とも話した。
JOCの理事は25人で、うち女性は5人。JOCはスポーツ庁がまとめた競技団体の運営指針「ガバナンスコード」に沿い、全理事のうち女性の割合を40%以上にすることを目標としている。
- 森会長の女性理事についての発言は以下の通り。
「これはテレビがあるからやりにくいんだが。女性理事を選ぶというのは、日本は文科省がうるさくいうんですよね。
だけど、女性がたくさん入っている理事会は、理事会の会議は時間がかかります。これは、ラグビー協会、今までの倍時間がかかる。女性がなんと10人くらいいるのか? 5人いるのか? 女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです。
結局、あんまりいうと、新聞に書かれますけど、悪口言った、とかなりますけど、女性を必ずしも数を増やしていく場合は、発言の時間をある程度、規制をしていかないとなかなか終わらないで困るといっておられた。だれが言ったとは言わないが。そんなこともあります。
私どもの組織委員会にも女性は何人いたっけ? 7人くらいか。7人くらいおりますが、みんなわきまえておられて。みんな競技団体からのご出身であり、国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。ですから、お話もシュッとして、的を射た、そういう我々は非常に役立っておりますが。次は女性を選ぼうと、そういうわけであります」
- 森喜朗会長が辞意 表明 女性蔑視発言で引責 川淵三郎氏も一転して会長就任辞退
- 2021年2月12日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は、評議員、理事を集めた合同懇談会で、女性を蔑視する発言をした責任を取り、会長を辞任することを表明した。後任については、森氏が次期会長就任を要請していた川淵三郎氏が一転して会長就任を辞退すると明言し白紙撤回となった。組織委員会は、後任の選出方法について、御手洗名誉会長を座長にして、国、都、JOC、アスリートなどの理事をメンバーにして選定委員会を設立して選定作業をすすめるとした。後任の有力候補には、橋本聖子五輪相の名前が上がっている。
森氏は発言問題の深刻化を受けて、組織委は、当初は、経緯を説明して陳謝し、続投への理解を求める方針だったが、国内外のメディアから「女性差別」と厳しい批判を浴び、アスリートやSNSなどで辞任を求める声が相次いで、今夏の大会準備への影響も出始めた。
9日には、当初は森会長が発言を撤回して謝罪したので「解決済」としていた国際オリンピック委員会(IOC)が、一転して、「森会長の発言は完全に不適切で、IOCがアジェンダ2020で取り組む改革や決意と矛盾する」と強く批判した。IOCに膨大なスポンサー料を払っているTOPスポンサー企業や収入の大黒柱である放送権料を負担する米NBCが批判の姿勢を強めたことが決め手となった。
10日には東京都の小池百合子知事が2月中旬で調整されていた国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長らとのトップ級4者協議を「今ここで開いても、あまりポジティブな発信にはならない」と述べ、欠席する意向を表明し、事実上、辞任の引導を渡した。
IOC、五輪大会を支えるスポンサー企業や米NBC、四面楚歌となった森会長には辞任の道しかない。 森会長は、日本サッカー協会や日本バスケットボール協会の会長を歴任し、東京五輪では選手村村長を務める川淵三郎氏に次期会長就任を要請し、川淵氏もこれを受託した。森会長は12日の会議で辞意を表明して、その場で川淵氏を会長に推薦するものとみられていた。一方、川淵氏は森会長に相談役就任を依頼していた。
しかし、菅政権には森会長自ら後任を推薦する手法や川口氏に異論が出ていたとされ、川淵三郎氏は一転して会長就任を辞退すると明言して白紙撤回となった。
辞任を表明する森喜朗氏 出典 TOKYO2020
森会長、女性蔑視発言 海外からも批判殺到
2021年2月3日、JOC臨時評議員会に出席した森会長は、「女性がたくさん入っている理事会の会議は、時間がかかります」「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」などと発言した。この発言に対して出席者で異論を唱える人はいなく、笑い声が出たとされている。 森氏の発言は、女性を蔑視したと受け取られ、国内内外から激しい批判を浴びた。 翌2月4日、森会長は記者会見を開き、女性を蔑視したと受け取れる発言をしたことについて、「深く反省している。発言は撤回したい」と謝罪した。会長職については「辞任する考えはない」と述べた。 質疑応答では「女性が多いと時間が長くなるという発言を誤解と表現していたが、誤った認識ではないのか」との質問に、「そういう風に(競技団体から)聞いておるんです」などと答え、競技団体全体にこうした認識が広がっていることを示唆した。 森会長は、老練な政治家のスピーチによく登場する半ば冗談の軽い気持ちで、この発言をしたのであろう。とりわけ女性差別主義者だったというわけではないだろう。しかし、ジェンダーの平等を高らかに掲げるオリンピック精神とは相いれない発言で、国際オリンピック委員会(IOC)として見過ごすことはできなかった。組織委員会の会長としての発言としては余りにも軽率だった。
2020東京五輪大会開幕まで半年を切っているなかでの大会組織委員会の森会長の辞任、日本は組織のガバナンスのお粗末さを世界に露呈した。世界各国の五輪関係者から失笑を買っていることは間違いない。
徳洲会グループから受け取った選挙資金を巡って辞任した猪瀬直樹元東京都知事、公用車利用や政治資金家族旅行など公私混同問題で辞任した舛添要一前東京都知事、そして迷走した新国立競技場の建設問題の責任をとって辞任した下村博文文部科学相、大会招致に関わる贈収賄疑惑で仏司法当局の捜査を受けて退任する竹田JOC会長、2020東京五輪大会の主要な関係者は次々と不祥事で舞台から退場していった。
最早、2020東京五輪大会にレガシーを語る資格はない 。
- 相次いだボランティア辞退
- 組織委員会は8日、4日以降に大会ボランティア(約8万人)辞退申し出が、約390人に上り、2人が聖火リレーランナーへの辞退を申し出たと発表した。組織委は辞退理由を公表していないが、3日に森喜朗会長が女性蔑視の発言をした影響とみられる。また、東京都は都市ボランティア(約3万人)の内、辞退申し出が93人になったと発表してている。
こうしたボランティア辞退の動きについて、自民党の二階俊博幹事長は8日の会見で、「瞬間的」なもので、「落ち着いて静かになったら、その人たちの考えもまた変わる」と語った。今後の対応については「どうしてもおやめになりたいということだったら、また新たなボランティアを募集する、追加するということにならざるを得ない」と述べ、「そのようなことですぐやめちゃいましょうとかとかいうことは一時、瞬間には言っても、協力して立派に仕上げましょうということになるんじゃないか」と発言した。
組織委員会では「五輪大会開催の成否は『大会の顔』となるボランティアの皆さんにかかっている」と高らかに唱えている。開催を半年に控えている中で、約11万人のボランティアの人たちの思いを踏みにじった女性蔑視発言、森会長の責任は重い。
東京五輪はまたもや汚点を残した。