「スーパー・スプレッダー」 東京五輪 新型コロナ・パンデミック禍の開催

「スーパー・スプレッダー」東京五輪 
 感染者が激増する中で、東京五輪2021が感染の激増を引き起こす「スーパースプレッダー・イベント」なるのか、懸念が広がっている。 

 2021年2月、政府は、大会期間中に選手村や各会場内で計1万人程度の医療スタッフが必要で、1日当たりでは最大で医師が約300人、看護師が約400人と見込み、うち各100人が新型コロナ対策にあたると想定した。東京五輪組織委は、日本看護協会に全国から看護師500人の派遣を文書で要請した。
 新型コロナの収束が見通せず、医療施設のコロナ病床の逼迫が続く中で、東京五輪大会に医療施設や医師・看護婦などのリソースを振り向けると、「地域医療がもたない」という強い懸念が医療関係者で広がっていた。
 東京五輪関連で選手や大会関係者に実施されるPCR検査は、1日最大7万件、国内での検査能力は1日、20万回とされ、組織委員会ではまだ余力があるとしているが、影響は避けられないだろう。
出典 Boykoff Twitter
選手や関係者に無償でワクチン接種
 2021年5月6日、米ファイザーと独ビオンテックは6日、東京五輪・パラリンピックに参加する選手団に新型コロナウイルスワクチンを無償で提供する方針で国際オリンピック委員会(IOC)と合意したと明らかにした。
 5月末に出荷を開始し、選手や関係者が東京入りする前に2回の接種を完了することを目指す。
IOCのバッハ会長は「全ての参加者にとって、東京五輪・パラリンピックを安全かつ確実なものとする手段になる」と述べ、すべての参加選手にワクチン接種を終えることを要請した。但し、「義務」ではなくあくまで「任意」だとしている。
6月10日、国際オリンピック委員会(IOC)のクリストフ・デュビ五輪統括部長は9日、今夏の東京オリンピック(五輪)時に選手村に入る選手らの新型コロナウイルスワクチン接種率について、80%を超える見通しになったと明らかにした。理事会後の記者会見で「この前は74%ぐらいと言っていたが、今は80%を超えた。今後も呼びかける努力を続けていく」と話した。
 一方、日本も、参加選手や指導者などを対象に新型コロナウイルスのワクチン接種が6月1日からナショナルトレーニングセンターで始まった。
接種は希望制で、対象は代表に内定している選手や内定の可能性がある選手、指導者、そして選手と接触する可能性のあるスタッフなどおよそ1600人である。
 このワクチン接種を、代表選手(候補を含む)の約5%が辞退したことが、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長が明らかにした。
 山下会長は「様々な考えから辞退する人、受けたくても受けられない人もいると聞いている」と述べた。

東京五輪2020の感染者1日7人程度の ”組織委が試算
6月11日、東京五輪組織委員会は、コロナ対策を検討する専門家会合で、大会期間中、選手や関係者に1日に7人程度の感染が確認されるという試算を示した。
先月行われた海外選手が参加したテスト大会での陽性者の数などを基に、組織委員会や東京都などが作成した試算である。
大会期間中の選手と大会関係者を合わせて7万7000人の参加者があると想定した。
また、入院は最大で選手が1人程度、大会関係者が10人程度、軽症や無症状での宿泊療養は、最大で合わせて57人程度とした。
選手や大会関係者の間では、感染拡大は限定的で、パンデミックは起きないとする想定である。
一方、政府は、東京五輪五輪2020が、今夏に予定どおり開催した場合、都内の新型コロナウイルス新規感染者は、8月下旬に1日当たり約1000人となり、中止や延期など開催しなかった場合よりも約200人増える試算をコロナ対策を検討する専門家会合で明らかにした
6月以降、都内で人出が毎週5%ずつ増加すると仮定し、大会を開催すれば、オリンピック時で1割、パラリンピック時で5%の人出増を加味した。
 ただ、ワクチン接種は5月末までの接種分しか考慮せず、実際には接種が進み、感染者数が試算より抑えられる可能性もある。
 試算によると、開催した場合、都内の新規感染者は7月中旬の約300人を底に増加に転じ、五輪開幕後の8月以降に急増して、同月下旬に約1000人となる。開催しない場合は、8月下旬は約800人にとどまる。
 大会開催の影響は約200程度、限定的で、パンデミックの拡大は、アルファー株より感染力や毒性の強い変異株、デルタ株が登場で感染力増大によるものが大きいだろう。
組織委員会は、この試算をもとに、地域医療に支障をきたさない形で大会の医療・療養体制を確保し、ワクチン接種や国内の人の流れの対策に重点的に取り組むことで、感染防止の徹底を図るとしている。

感染症策の行動ルール 「プレーブック」
6月15日、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)や国際パラリンピック委員会(IPC)は、東京五輪大会に参加する選手や大会関係者の新型コロナ感染症対策の行動ルールをまとめた「プレーブック」を公表した。
 「プレーブック」は、行動管理ルールや検査体制、ルール違反に対する制裁措置などが定められ、「選手やチーム・オフイシャル」版、「放送/プレス」版、「パートナー/IF」版、「オリンピック・ファミリー/ワークフォース」版の4種類で、最新版(第3版)を15日から順次公表した。
7月1日以降に入国する人たちから適用する。
第3版では制裁が具体化されて、国外退去措置なども明記され、政府は、「悪質な違反者については国外退去を求めたい」としている。
今後の感染状況によっては大会前まで細かく項目を追加するとしている。

強化した「水際対策」
強化したのはまず「水際対策」である。出国前の14日間の健康観察や出国前96時間以内の2度のPCR検査、陰性証明書や活動計画書の提出義務づけた。さらに到着した空港での検査で陰性なら入国を認め、初日から練習が可能になる。入国者は、全員、スマホアプリで行動管理が行われ、GPSを利用して立ち回り先を把握される。選手団にはコロナ対策責任者を必ず置くよう定めた。

「バブル」方式でコロナ感染対策
 滞在中、選手は毎日検査しなければならない。移動は専用車両に限られ公共交通機関は利用できない、行き先も厳しく限定され、選手村や競技会場、練習会場に限られる。第三者との接触を避ける「バブル」方式である。この「バブル」方式は北京冬季五輪2022にも受け継がれた。
 選手村入村後、選手や選手団関係者は、毎日、自室で「抗原検査」を行うことが義務付けられる。 検体は選手が採取するが、検査の精度を下げぬよう直前の歯磨きなどは控えるよう求め、不正防止のため、抜き打ち検査も検討する。
選手村に設置された「検体採取センター」は唾液検体を午前9時か午後6時に提出を受けつけて、約12時間で結果を出す。午前9時に出せば夜に結果がわかり、翌日の試合に出場できる。
陽性が疑われた場合には、同じ検体でPCR検査を行い、再陽性なら選手村の「発熱外来」で、鼻の奥をぬぐって検体を採取するPCR検査を受ける。
「発熱外来」で検査を受けて、陽性が確定した時は、大会組織委員会が用意した宿泊療養施設や病院への入院の調整をする
入院先としては、都内外あわせて20カ所以上の大会指定病院を確保して、軽症者や無症状者向けの隔離療養施設として、選手村外の都内に約300室のホテル1棟も借り上げる。
こうしたコロナ検査体制を行うために、東京臨海部の選手村には、24時間態勢の19棟のプレハブ施設の「発熱外来」や「検体採取センター」を設置した。
また9都道県の43会場には130カ所以上の医務室や、発熱者を一時隔離するエアテントなどを設けた。
 選手村の滞在期間は厳しく制限され、選手は競技終了後、48時間に退去することも求められた。
「プレーブック」が公表された6月15日、新型コロナウイルスの感染者の累計が1月15日に初の感染者を題して以来、累計で77万4604人、死亡者は1万4182人に及んだ。
「緊急事態宣言」が出された東京、大阪、北海道や7県での医療の逼迫状況のデータなどが明らかにされたが、病床使用率では東京で22.8%、北海道では48.1%、最高は沖縄で89.1%、重症病床使用率では東京で35.1%、北海道で23.4%、沖縄で23.4%とした。
 また感染拡大の指標となる感染経路不明は東京で59.8%と約60%を記録し、兵庫で50.2%、沖縄で56.3%に達していた。
 五輪大会関係者の感染が限定的でも、地域での「医療崩壊」の危機は緊迫感を増してきた。
定義項目2
説明項目2が入ります。
定義項目3
説明項目3が入ります。