都市ボランティア(シティキャスト) 出典 Tokyo2020シティキャスト活動記録 東京都
- 東京オリンピック ボランティア批判 タダ働き やりがい搾取 「ただ働き」労働力ではない
- オリンピックやパラリンピック大会の開催で、ボランティアが欠かせない存在になっている。
東京オリンピック2020では、組織員会が管理する「大会ボランティア」を8万人、東京都が管理する「都市ボランティア」を3万人、五輪史上最高の11万人のボランティアを募集した。笑顔と思いやりでサポートをするボランティアに人たち「おもてなし」で暖かい対応は、参加アスリートや来訪者に大きな感動を与え、「東京オリンピックの顔」になったとされる。とりわけコロナ禍の「異例」の逆風の五輪となった中で、海外のアスリートから称賛の声が相次いだ。
「フィールドキャスト」と呼ぶ「大会ボランティア」は、競技会場や選手村の大会関連施設で、競技運営のサポート、メディアのサポート、観客の案内、車両の運転、医療、大会運営などをサポートする。
これに対して、「シティ キャスト」と呼ぶ「都市ボランティア」は、空港や駅、主要駅、観光地で、国内外から訪れる人たちへ観光や交通の案内を行ったたり、競技会場の最寄駅周辺で観客への案内等を行ったりする。
いずれも、大会の成功を願って、奉仕精神と高い志に溢れた人たちが支えている。その熱意と努力には、筆者も称賛と敬意を捧げたい。
ボランティアは、「自主性」(強制ではない自由な意思)、「社会性」(社会や地域社会全体への貢献)、「無償性」(対価を求めない)などが原則とされている。地震や洪水の被災地や被災者の支援(災害ボランティア)、高齢者や障碍者の支援、子育てや教育のサポート、地域への貢献、イベントのサポート、国際協力・国際交流など幅広い分野で、現代の社会においてかけがえのない存在となってきた。
しかし、五輪大会のボランティアはその制度に、多くの問題点を抱えながら大会ごとに膨張する
五輪ボランティアを最初に大規模に募集したのはロサンゼルス五輪1984である。税金は「1ントも使わない」と公言したピーター・ユベロス組織委員会長は、徹底した収入増加と経費削減を行い、その一環として大会運営に関わるスタッフの人件費の節約を狙い、約3万人(当初計画5000人)に上る大量のボランティアを募集した。無償のボランティアを経費削減のツールとした最初のオリンピックである。ロンドン五輪2012では約7万人(これとは別にロンドン市は8000人都市ボランティア)のボランティアが活動し、約700万時間に相当する労働時間をボランティアから得たとされている。そしてリオデジャネイロ五輪では5万6000人の大会ボランティアと1700人の都市ボランティア(リオ市)が活動した。- 大会主催者の組織委員会や開催都市は、ボランティアを大量に募集して、大会運営のサポートを得ることが定着した。その目的として、市民をボランティアとして大会に参加させることで大会の機運醸成を図るとしているが、本音は、ボランティアという無償の「労働力」を調達して、大会運営に係る人件費を節約して開催経費の削減を図ることである。国際オリンピック委員会(IOC)にとっても毎回高騰する開催経費の縮減は、至上命題になってきた。
一方、一般市民や学生にとって、五輪ボランティアは、めったにない大きな国際イベントに関わることで貴重な体験ができるとして魅力的な対象である。世界の一流アスリートに間近で接したり、最高峰の競技を見れたりするメリットもある、五輪ボランティアは“やりがい”に溢れた活動に映るのである。
こうして生まれたシステムが、「タダ働き やりがい搾取」の五輪ボランティアである。五輪大会は、最早、スポンサー料や放送権料などの巨大なマネーが動く巨大な「商業イベント」になってしまった。「商業イベント」に無償ボランティアはふさわしくない。ボランティアという名を隠れ蓑して「待遇」をまったく考慮しないのは納得しがたい。
問題は、ボランティアに人たちにあるのではなく、すべては「タダ働き」を前提とするボランティアを募集する側にある。 - 大会主催者の組織委員会や開催都市は、ボランティアを大量に募集して、大会運営のサポートを得ることが定着した。その目的として、市民をボランティアとして大会に参加させることで大会の機運醸成を図るとしているが、本音は、ボランティアという無償の「労働力」を調達して、大会運営に係る人件費を節約して開催経費の削減を図ることである。国際オリンピック委員会(IOC)にとっても毎回高騰する開催経費の縮減は、至上命題になってきた。
- 新型コロナウイルス・暑さ対策は? ボランティアの安全・安心は守られるのか? コロナ感染28人 熱中症20人以上発生
新型コロナウイルス(COVID-19) 出典 NYT/NIAID
- ボランティア7万人全員にワクチン接種へ 十分な免疫獲得は間に合わず
空前の新型コロナパンデミックに襲われた東京2020大会、新型コロナの感染からボランティアを守ることが最大のテーマになった。大会開催の直前に、政府は緊急事態宣言が発令され、これを受けて五者協議・関連自治体連絡協議会が開かれ、「無観客」開催が決まった。ボランティアを取り巻く状況が緊迫化した。
2021年6月26日、東京2020大会組織委員会は、大会ボランティアの全員約7万人にワクチン接種の案内を行うと発表した。これまでは国際オリンピック委員会(IOC)による米ファイザー社製のワクチン無償提供により、大会関係者、職員、国内メディアなど約3万8000人の接種が進められていたが、都の協力によりモデルナ社製のワクチンや接種会場の確保ができたという。新たな対象となったボランティアは6月30日から7月3日に1回目の接種を行い、2回目の接種は五輪期間中の7月31日からとなる。接種会場 は、1回目東京都築地ワクチン接種センター、 2回目代々木公園内を予定している。
しかし、モデルナの効果は、2回目の接種から約2週間後程度で十分な免疫が生成されるとされ、7月31日からの2回目の接種では五輪期間中に十分な免疫獲得はできない。
丸川五輪相は、「まず1回目の接種で、1次的な免疫をつけていただく」と述べて批判を浴びている。
後手後手に回ったボランティアへの感染防止対策の遅れのツケが顕在化した。
参加選手や大会関係者、観客などと接触する機会が多く、感染リスクが高いボランティアの「安全・安心」の確保は置き去りにされたと言わざるを得ない。変異株の感染は、20代や30代の若者を中心に広がっている。
選手団には、ワクチン接種、毎日の検査、選手村でのバブル環境、競技場には専用バスで送迎、相当のレベルのコロナ感染防止対策が講じられる。一方、ボランティアは、毎日、公共交通機関を使用し、人によっては片道、1~2時間かけて競技会場などに1週間以上通う。宿泊施設が必要な場合は、自力で確保する。市民と接触する場も多く、破格に感染リスクが高い。しかしその格差はあまりにも大きすぎる。
ボランティアの「安全・安心」を確保するのは組織委員会の当然の責務だ。
また都市ボランティアはワクチン接種や検査の対象にまったく入っていない。
出典 IOC
組織委のコロナ対策 「感染症対策リーフレット」と「マスク」、「消毒液」、「体調管理ノート」だけ
ボランティアに対する新型コロナ感染防止対策の遅れは問題を残した。
2021年3月1日、東京2020大会組織委員会は、ボランティアの新型コロナ対策として、日本ボランティアサポートセンターが制作協力した「感染症対策リーフレット」を始め、選択可能なマスク2枚、携帯用アルコール消毒液、体調管理ノートをボランティアに配布すると発表した。
▼ 「感染症対策リーフレット」
「基本行動」として、マスク着用、手洗い・消毒、フィジカルディスタンス(2m)の確保を上げる。
そして「活動の場面の注意」として、「食事中・休憩中」は、密を避けて、会話を控え、なるべくマスク着用とし、「観客や仲間のコミュニケーション」では、握手・ハイタッチはしない、「観客の手荷物・写真撮影」では、使い捨て手袋着用を推奨する。
活動中は、密集の回避、共用品の除菌、換気が重要とし、活動前には体調管理ノートをつけて体調の自主管理をすることとした。
記載されている内容は、ごくごく一般的な感染防止対策を記載しているだけに過ぎない。
この程度では大会組織委員会がボランティアの感染防止対策を本気で考えているどうか疑問が大きい。「安全・安心」とはほど遠いのは明らかである。
「感染症対策リーフレット」 出典 TOKYO2020
ボランティア1万人辞退 コロナ感染不安
2021年6月2日、東京2020大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は、競技場などで運営を支える約8万人の「大会ボランティア」のうち、約1万人が辞退したと明らかにした。新型コロナウイルスの感染に対する主な理由と思われるがボランティアの1割離反する異常事態になった
武藤氏は辞退の理由について異動や進学などの影響を上げる人もいたが、「コロナ感染への不安があるのは間違いない」と認めた。2月には森喜朗前会長の女性蔑視発言で辞退者が約1000人に上った。そして、変異株の広がりなどで感染拡大が収まらず、ボランティアに対するワクチン接種や検査体制など感染防止対策示されない中で不安が増して、辞退者が続出した。
大会組織委員会の武藤事務総長は、大会運営への影響について、海外からの観客の受け入れ断念を決めたこともあり、「当初の計画が簡素化されたので問題ない」としている。
東京大会は延期前の当初計画では、過去最大規模となる約11万人が運営を支える計画だった。競技会場などで運営に関わる大会ボランティアが8万人、駅や空港で観光案内を務める、自治体が募集する都市ボランティアが3万人としていた。
大会ボランティアに対しては、5月にユニフォームなどを配布し、6月には各競技場で「会場別研修」が始まる。地方に住むボランティアは、交通費、宿泊費を自己負担して東京などに来なければならない。
ボランティアに皆さんは「会場別研修」のタイミングで、改めてボランティアとしての活動を継続するのか、熟慮して判断して欲しいと筆者は考える。
オリンピックの延期を決めたバッハ会長は「東京五輪がウイルスに打ち勝った象徴的な祝典になることを願う」と述べたが…… 出典 IOC NEWS 3月30日
- ボランティア7万人全員にワクチン接種へ 十分な免疫獲得は間に合わず
- 緊急課題 ボランティアの暑さ対策は? 五輪史上最大級の猛暑に警戒
- 1999年の夏は、梅雨明けは例年に比べて遅かったが、梅雨明け後は、一転して猛暑が続き、夜になっても気温が下がらず、連日熱帯夜となった。
来年の東京五輪大会開催期間(7月24日~8月9日)も同様の猛暑が予想され、とりあけ都心は、ヒートアイランド現象による気温上昇に加えて湿度も高く、過去の大会で最も厳しい「酷暑五輪」になると思われる。
TOKYO2020を見据えて、1999年7月から8月にかけて、本番の大会運営を検証するためにテストイベント、「READY STEADY TOKYO TEST EVENTS」が相次いで開催された。
7月には、近代五種(武蔵野の森総合スポーツプラザ)やウエイトリフティング(東京国際フォーラム)、アーチェリー(夢の島公園アーチェリー場)、自転車競技
(ロード)(スタート:武蔵野の森公園、ゴール:富士スピードウェイ)、バドミントン(武蔵野の森総合スポーツプラザ)、ビーチバレー(潮風公園)、8月になって、ボート(海の森水上競技場)、馬術(海の森クロスカントリーコース、馬事公苑)、ゴルフ(霞ヶ関カンツリー倶楽部)、マラソンスイミング(お台場)、トライアスロン(お台場)、セーリング(江の島ヨットハーバー)の競技大会が開かれた。
テストイベントを行う中で、明らかになった最大の問題は、「暑さ対策」である。またトライアスロン(水泳)やマラソンスイミングでは水質や水温の問題が浮かび上がった。
連日暑さ指数31°C超「危険」
環境庁のデータによると、テストイベントが集中した8月11日の週の暑さ指数(WGBT 環境省発表)は、31.6°C(11日)、31.2°C(12日)、32.4°C(13日)、31.4°C(14日)、31.4°C(15日)といずれも31°Cを超え、16日は台風10号の影響で、30.4°C、17日は逆にフェーン現象で33.5°Cと今年最高を記録した。
環境省の指針によると、31°C以上は、「危険」とし、「すべての生活活動でおこる危険性」があり、「高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」としている。
8月11日からの1週間はほぼ連日「危険」の猛暑続いたのである。
記録的な猛暑は、五輪大会開催にとって大きな脅威となった。
出場する選手は勿論、大会関係者、大会を支えるボランティア、そして競技場を訪れる大勢の観客、十分な暑さ対策を実施しないと熱中症で体調を崩す人が続出する懸念が大きい。
猛暑の直撃を受けるボランティア
猛暑の直撃うけるのは、大会の運営を支えるボランティアである。大会組織委は競技会場や選手村などで競技や運転など各種運営をサポートする「大会ボランティア」8万人、東京都は空港や駅、観光地で、国内外から訪れる人たちへ観光や交通の案内を行う「都市ボランティア」3万人を確保する計画である。
この内、特に猛暑のダメージが大きいのは、屋外で行われるビーチバレーやボート、カヌー、トライアスロン、馬術クロスカントリー、アーチェリー、セーリング、ウインドサーフィン、それにマラソンや競歩、自転車(ロード)などの大会ボランティアである。長時間、猛暑の炎天下で業務にあたらなければならない。
屋内のアリーナで開催される競技についても、観客整理、交通整理などで大勢のボランティアが炎天下で業務になる。
五輪大会テストイベントが行われた海の森公園から帰るバスに乗り合わせたボランティアの人が、「この暑さはもう体力の限界を超える。テストイベントは本番の半分の時間、これが二倍になるになると耐えられない。是非、シフト体制を考えてもらいたい」と話していた。
まさにボランティアの「命を守る」ための施策が迫られているのである。
ボランティアの「命を守る」対策を
来年の夏も猛暑は避けることができないだろう。
ボランティアを猛暑から守るためには、炎天下で業務にあたる時間を短くするほかないだろう。それぞれの担当セクションで、配置ボランティアの数を倍に増やし、休憩時間を大幅に増やすシフト体制を組む必要があるだろう。1時間、炎天下で業務に従事したら、1時間は冷房完備のシェルターで休憩する。ボランティアの「命を守る」ためには必須の条件となってきた。
また、大会ボランティアを志望した人には、高齢者や家庭の主婦、いつも冷房の効いたオフイスで仕事をしているサラリーマンなど、猛暑の中の業務に慣れていない人が大勢いると思われる。炎天下、体感温度は35度を楽に超え、強烈な日差しが照り付ける。その中でのボランティア業務である。
さらに問題なのは、暑さ対策、競技の開始時間が次々と早められ、早朝に競技開始が変更されていることだ。マラソンは午前6時、男子50キロ競歩は午前5時30フィン、ゴルフも午前7時、さらに今回のテストイベントの結果を踏まえて、オープンスイミングでは午前5時開始、トライアスロンも7時30分開始を検討している。今年の猛暑を鑑みて、その他の競技の開始時間も早められる可能性は大きい。
かりに7時競技開始の会場のボランティアになると、その2時間前程度、午前5時前には会場に集合し、配置につく準備をしなければならない。自宅を出発するのは3時過ぎになるだろう。連日、3時起きで半日から1日、炎天下にさらされたら、ほとんどの人が体力の限界に達する。そもそも交通機関が動いていないので早朝に会場に来ること自体が不可能になる可能性が大きい。前日の終電で会場に入り、徹夜で朝まで周辺で待機することになるだろう。それも1日だけでなく、競技によっては10日以上続く。今は所待機場所を確保していると情報はない。熱帯夜が連日続く中で徹夜での待機、それこそ人権問題である。大会ボランティアは「一日8時間以上、10日間以上」、こうした中で業務を行わなければならないのである。
ボランティアに応募した人たちは、猛暑の中での業務の過酷さを冷静に見つめて欲しい。猛暑は確実に来年もやってくる。
炎天下の仕事に自信のない人は、屋外での業務は断り、室内の涼しい場所への配置転換を希望しよう。また、集合時間を確認して、始発電車に乗っても間に合わない場合は変更を希望しよう。勿論、業務シフトや休憩時間を確認しよう。「命を守る」ための選択だ。
大会ボランティアの場合は、「10日間以上」が条件となっている。ボランティアに応募した皆さん、連日暑さ指数、31°Cを超える中で、10日間以上、炎天下でボランティアを続ける自身がありますか?
奉仕精神に溢れた高い志を持ってボランティアに応募した人たちを猛暑から守る責任が課せられたのは大会組織委員会である。まさか、暑さ対策は「自己責任」とは、大会組織委員会は言わないと信じたい。同様の対応は都市ボランティアを募集した東京都にも求められる。
あと1年、暑さ対策は早急に手を打たなければならない緊急課題となった。
暑さ対策ではついに「降雪機」も登場 海の森水上競技場 筆者撮影 9月13日
清涼感を味わえる程度で気温を下げる効果はない 報道陣に公開した実験では300kgの氷を使用してわずか5分間で終了
ビーチバレーの会場(潮風公園)の入り口に設置されたミスト 観客のラストワンマイル(駅から会場までの間)の暑さ対策で設置 ミストにあたっている間は涼しさを感じるが熱中症防止の体全体を冷やす効果はない 筆者撮影 2019年7月25日
ビーチバレーの会場内に設置された休憩所 テントの中は冷房されている こうした休憩所を各競技場に多数設置する必要がある 筆者撮影 2019年7月25日
出典 IOC - 森会長、女性蔑視発言 ボランティアの辞退相次ぐ
森喜朗組織委員会長 出典 Tokyo2020
- 2021年2月3日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は、JOC臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は、時間がかかります」「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」などと発言した。この発言に対して出席者で異論を唱える人はいなく、笑い声が出たとされている。
森氏の発言は、女性を蔑視したと受け取られ、国内内外から激しい批判を浴びた。
翌2月4日、森会長は記者会見を開き、女性を蔑視したと受け取れる発言をしたことについて、「深く反省している。発言は撤回したい」と謝罪した。会長職については「辞任する考えはない」と述べた。
質疑応答では「女性が多いと時間が長くなるという発言を誤解と表現していたが、誤った認識ではないのか」との質問に、「そういう風に(競技団体から)聞いておるんです」などと答え、競技団体全体にこうした認識が広がっていることを示唆した。
これに対して、組織委員会は8日、4日以降に大会ボランティア(約8万人)辞退申し出が、約390人に上り、2人が聖火リレーランナーへの辞退を申し出たと発表した。組織委は辞退理由を公表していないが、3日に森喜朗会長が女性蔑視の発言をした影響とみられる。
また、東京都は都市ボランティア(約3万人)の内、辞退申し出が93人になったと発表してている。
こうしたボランティア辞退の動きについて、自民党の二階俊博幹事長は8日の会見で、「瞬間的」なもので、「落ち着いて静かになったら、その人たちの考えもまた変わる」と語った。今後の対応については「どうしてもおやめになりたいということだったら、また新たなボランティアを募集する、追加するということにならざるを得ない」と述べ、「そのようなことですぐやめちゃいましょうとかとかいうことは一時、瞬間には言っても、協力して立派に仕上げましょうということになるんじゃないか」と発言した。
組織委員会では「五輪大会開催の成否は『大会の顔』となるボランティアの皆さんにかかっている」と高らかに唱えている。開催を半年に控えている中で、約11万人のボランティアの人たちの思いを踏みにじった女性蔑視発言、森会長の責任は重い。
- 2021年2月3日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は、JOC臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は、時間がかかります」「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」などと発言した。この発言に対して出席者で異論を唱える人はいなく、笑い声が出たとされている。
- 東京2020大会ボランティア募集開始
国立競技場の陸上トラックでハードルを片付けるボランティア 出典 IOC
- 2018年9月26日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会と東京都は、大会を支えるボランティアの募集を開始した。インターネットなどで12月上旬まで応募を受け付け、計11万人の人員確保を目指す。
大会組織委は、競技会場や選手村の大会関連施設で、競技運営のサポート、メディアのサポート、観客の案内、車両の運転、医療、大会運営などをサポートする「大会ボランティア」(「フィールドキャスト」)を8万人募集する。
これに対して、東京都は空港や駅、主要駅、観光地で、国内外から訪れる人たちへ観光や交通の案内を行ったたり、競技会場の最寄駅周辺で観客への案内等を行ったりする「都市ボランティア」(「シティ キャスト」)を3万人を確保する。 「都市ボランティア」3万人の内、1万人は東京都観光ボランティアや2019年に開催されるワールドカップで活動したボランティア、都内大学からの希望による参加者、都内区市町村 からの推薦者(5,000 人程度)などが含まれ、新規の募集は2万人程度となる。
東京都以外で競技会場となる神奈川県、千葉県、埼玉県も都市ボランティアを募集する。
対象は20年4月1日時点で18歳以上の人。原則として大会ボランティアは休憩や待機時間を含めて1日8時間程度で計10日以上、都市ボランティアは1日5時間程度で計5日以上の活動が条件となる。
食事やユニホーム、けがなどを補償する保険費用は支給され、交通費補助の名目で全員に1日1000円のプリペイドカードを提供するが、基本的に交通費や宿泊費は自己負担となる。また、大会ボランティアは希望する活動内容を三つまで選択できるが、希望順を伝えることはできない。
ボランティアの応募者は、書類選考を得て、説明会や面接、研修などに参加した後、2020年3月頃に最終的に採用が決まる。4月からは役割や会場に応じて複数回の研修を受けて、7月からの本番に臨む。
いずれもユニホームや食事が提供されるほか、交通費についても有識者会議で「近郊交通費ぐらいは出せないか」との意見が出たため、1日1千円のプリペイドカードを支給するこことが決まった。
応募期間は12月上旬までとしているが、必要数に達しない場合は再募集も行う。
大会ボランティアは組織委ホームページ(https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/)から、都市ボランティアはボランティア情報サイト「東京ボランティアナビ」(http://www.city-volunteer.metro.tokyo.jp/)などで申し込みができる。
出典 東京都
組織委と都は26日午後1時の募集開始に合わせ、新宿駅西口広場でPRチラシを配布し、応募を呼びかけた。
募集担当者は「今後はボランティアに関する情報をきちんと伝えていきたい。大会を自分の手で成功させたいと思っている人にぜひ応募してほしい」と話している。
しかし、東京2020大会ボランティア募集については、早くから「10日以上拘束されるのに報酬が出ない」とか「交通費や宿泊費が自己負担」などの待遇面や募集条件が厳しいことで、「タダ働き」、「やりがい搾取」、「動員強制」との批判が渦巻いている。
東京オリンピックは、果たしてボランティアが支える対象としてふさわしい大会なのだろうか、疑念が湧いてくる。
出典 IOC
- 2018年9月26日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会と東京都は、大会を支えるボランティアの募集を開始した。インターネットなどで12月上旬まで応募を受け付け、計11万人の人員確保を目指す。
- 大会ボランティアの活動内容は?
- 大会ボランティアは、競技会場や選手村、その他の大会関連施設で、観客サービスや競技運営のサポート、メディアのサポート等、大会運営に直接携わる活動をする。
大会ボランティアの活動分野は9つのカテゴリーに分かれている。


出典 2020東京大会組織員会 募集リーフレット
- 大会ボランティアは「経験」と「スキル」を要求する業務 ボランティアの役割の域を超えている
- 大会ボランティアの活動分野の内、「案内」(1万6000人~2万5000人)は、“日本のおもてなし”の思いやりあふれたホスピタリティを実現させるサービスとして、ボランティアの本来活動分野としてふさわしいだろう。また「式典」(1000人~2000人)も同様と思える。
しかし、「競技」(1万5000人~1万7000人)、「移動サポート」(1万人~1万4000人)、「アテンド」(8000人~1万2000人)、「運営サポート」(8000人~1万人)、「ヘルスケア」(4000人~6000人)、「テクノロジー」(2000人~4000人)、「メディア」(2000人~4000人)ともなると、相応の経験をスキルが要求され、明らかにボランティアの活動領域を超えている。大会運営に関わるまさに根幹業務で基本的に大会スタッフが担当すべきだ。
「運営サポート」では、IDの発行もサポートするとしているが、IDの発行は、セキュリティ関わるまさに重要な業務で、個人情報の管理も厳しく問われる。ボランティアが携わる業務として適切でない。組織委員会が責任を持って雇いあげた大会専任スタッフが行うべきだ。
また「案内」のセキュリティーチェックに関わる業務もボランティアがやるべきではない。大会専任スタッフが担当すべきだ。
「競技」では、競技の運営そのものに関わるとしているが、これは競技運営スタッフが行うものでボランティアが担う役割ではないだろう。競技運営スタッフは事前に十分なトレーニングと習熟を得なければならない。当然、経験とスキルが要求される。
「移動サポート」は、運転免許証を要求するので、「補助」ではなく、「ドライバー」なのである。大会開催時には、組織委員会は輸送バス2200台、輸送用車両2500台を運行する予定で、ドライバーなどの輸送支援スタッフを3万人/日を有償で確保する。さすがに輸送用バスをボランティアのドライバーが運転することはないだろうが、8人乗り程度のVANの運転はボランティアに頼ることになりそうだ。大会車両の運転は安全性の確保の責任が大きく、運転はボランティアではなく、大会運営スタットとして雇われた「ドライバー」が担うべきだ。安易なボランティア頼みは問題である。
海外からの選手が多い五輪大会の「アテンド」は語学のスキルが要求される。英語はもとより、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、韓国語、アラビア語、多様な言語のスキルを持ったスタッフを揃えなければならない。言語のスキルを持つ人に対しては、スキルに対して相応の報酬を払うが当然だ。
例えば、大会スタッフとして雇用された通訳には1日数万円の報酬が支払わられ、その一方でボランティア通訳は「ただ働き」、これは差別としかいいようがない。スキルと経験に差があるというなら、スキルと経験や業務内容に応じて報酬は支払うべきだろう。仕事の内容は程度に差はあれほぼ同一なのに、「現場監督」は有償で、「部下」はボランティアという名目で「タダ働き」、あまりにも理不尽である。
「ヘルスケア」、「テクノロジー」はまさに専門職のスキルが必要で、ボランティアの活動領域に当たらない。
「メディア」対応も、運営スタッフの専門領域だ。もっともメディアの人混み整理程度の仕事ならボランティアで可能だろう。
国際オリンピック委員会(IOC)は、2013年から2016年の期間(ソチ五輪、リオデジャネイロ五輪)に、世界の放送機関から41億5700万ドル(約4697億円)という巨額の放送権料を手に入れている。国際オリンピック委員会(IOC)や組織員会は、責任を持ってメディア対応スタッフを有償で雇い上げて、メディアにサービスをしてしかるべきだ。
大会の運営にあたって、組織委員会はさまざまな分野で大勢の大量の大会運営スタッフを雇い入れる。輸送、ガードマン、医師・看護婦、通訳、競技運営、その数は10万人近くになるだろう。大会運営スタッフは、業務経験やスキル、業務内容に応じてその待遇は千差万別だが、報酬が支払わられ、交通費や出張を伴う業務を行う場合には宿泊費、日当も支払われるだろう。
業務内容に程度の差はあれ、ほとんど同じ分野の業務を担って、ボランティアは無報酬で「タダ働き」、交通費も宿泊費も自己負担というスキームは納得がいかない。有償の大会運営スタッフとボランティアの差は一体なにか、組織委員会は果たして明確に説明でるのだろうか?
ボランティアは大会関連車両の運転も行う 出典 Tokyo2020
- ウエッブの応募サイトを開くと更に疑問が噴出
- 「東京2020大会ボランティア」の応募登録サイト(https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/method/)
を開くと、まず驚くのは「応募フォームの入力には約30分かかります」という注意書きが赤い文字で書かれていることだ。
入力フォームは、STEP 6まであり、入力しなければならない情報はかなり多い。
▼ STEP1 氏名、性別、生年月日、写真、必要な配慮・サポート 等
▼ STEP2 住所・連絡先、緊急連絡先 等
▼ STEP3 ボランティア経験、就学・就労状況
▼ STEP4 語学、スポーツに関する経験、運転免許証の有無 等
▼ STEP5 希望する活動(期間、日数、場所、分野) 等
▼ STEP6 参加規約・プライバシーポリシーへの同意
STEP 1とSTEP2は、常識的な入力項目だが、STEP3になると、これがボランティア応募の入力フォームかと疑念がわき始めた。
STEP3では、「ボランティア経験がありますか?」とボランティア経験が聞かれる。
「はい」と答えると、「ボランティア経験の種類」、「活動内容」が聞かれる。
また「ボランティアリーダーの経験ありますか?」と聞かれ、同様に「活動内容」が訊ねられる。
さらにスポーツに関わる活動を選択した人に対しては、「国際レベルの大会に選手として参加」、「全国レベルの大会に選手として参加」、「その他の大会に選手として参加」など選手として競技大会に参加経験があるが聞かれる。
そして「審判としての経験」、「指導経験」、「競技運営スタッフとしての経験」などが問われる。
語学のスキルや希望する活動分野(10項目から選択)についても聞かれる。
これを元に書類選考し、まずふるいにかけるのである。
この「応募フォーム」はまるで大会スタッフ応募のエントリーシートのようである。就職試験のエントリーシートとも見間違う。
業務経験とスキルを重視する姿勢は、善意と奉仕を掲げるボランティア精神とはまったくかけ離れている。
やはり、「大会ボランティア」の募集とは到底考えられず、「大会スタッフ」の募集フォームなのである。
本来は、大会スタッフとして、報酬を払い、交通費、宿泊費を支払って雇用すべき業務分野なのである。
それを「ただ働き」させるのは、筆者はまったく納得がいかない。
「大会ボランティア」は善意と奉仕の精神を掲げボランティアの活動領域ではない。ボランティアに応募する善意と奉仕の精神に甘えきった「やりがい搾取」である。
- 事前の説明会、研修で大幅に拘束されるボランティア
- ボランティアとして採用されるには、事前に何回も説明会や研修に参加することが義務付けられている。
大会ボランティアの場合、2019年1月から7月頃までに、オリエンテーション(説明会)や面談に呼び出される。
10月からは共通研修が行われ、2020年4月からは役割別の研修やリーダーシップ研修が始まる。6月からは会場別の研修が行われ、ようやく本番に臨むことになる。
実は、ボランティアとして活動するためには、オリンピック開催期間中に最低10日間(都市ボランティアは5日間)を確保すれば済むわけではないのである。頻繁に、説明会や面談、研修などに参加しなければならない。そのスケジュールは、現時点ではまったく不明で、組織委員会の都合で、一方的に決められるだろう。
約1年半程度、あれこれ拘束されるのである。
仮に地方からボランティアとして活動しようとしている人は、そのたびに交通費や宿泊費などの自己負担をしいられる。首都圏在住の人も交通費は負担しなければならないし、なによりスケジュールを空けなければならない。1日1000円のプリぺードカードが支給されるかどうかも不明だ。
組織委員会が雇い上げる大会スタッフには、事前のオリエンテーション(説明会)や研修に対しても1日いくらの報酬が支払わられるだろう。
要するに、大会開催経費を圧縮するために、ボランティアというツールを利用する構図なのである。
「オリンピックの感動を共有したい」、「貴重な体験をしたい」、「人生の思い出に」、ボランティアに応募する人は、善意と奉仕の精神に満ち溢れている。
こうしたボランティアの人たちへの「甘え」の構図が見えてくる。
やはり、「やりがい搾取」という疑念が筆者には拭い去れない。
ボランティアは「自発的」に「任意」で参加しているから問題ないとするのではなく、オリンピックが「やりがい搾取」という構図で成り立っていることが問題なのである。
無償のボランティアが11万人も働く一方で、オリンピックというビック・ビジネスで膨大な利益を上げている企業や最高で年間2400万円とされる高額の報酬を得ている組織委員会関係者を始め、ボランティアとほぼ同様の業務を担う有償で雇う膨大な数の大会スタッフが存在することが問題なのである。
ちなみに森組織委会長は、報酬を辞退して、「ボランティア」として大会組織委員会業務を担っている。
出典 2020東京大会組織員会 募集リーフレット
- 都市ボランティアは、ボランティアにふさわしい活動領域
- 経験とスキルが要求される大会ボランティアに比べて、東京都が募集している都市ボランティアの活動領域は、本来ボランティアが担うのにふさわしい領域だろう。世界最高の「おもてなし」、優しさあふれたホスピタリティ、まさに東京大会レガシーにしたい。世界各国や日本各地から東京を訪れる人たちに、東京のよさをアピールする恰好の機会だ。
筆者も海外各国を出張や旅行でたびたび訪れたが、初めての都市では、地下鉄やバスの切符の買い方、目的地までの道順など戸惑うことがたびたびである。空港や駅、繁華街、観光地、競技場周辺など、ボランティアが活躍する場は多い。
外国人に接する場合も、簡単な日常会話ができれば問題なく、高度な語学力の専門知識も不要で、年齢、職業、スキルを問わず活動ができる。
「5日間以上」とか事前の説明会や研修等への出席などの要求条件は若干厳しいが、ボランティアの本来の概念に合致している。
東京大会でボランティアの参加を目指す学生の皆さん、「ブラックボランティア」の疑念が多い大会ボランティアでなく、都市ボランティアを目指すのをお勧め!
「企業ボランティア」はボランティアではない
9月7日、大会ボランティアとして参加予定の社員324人を集めてキックオフイベントを開いて気勢を上げて話題になった。
富士通は東京大会に協賛するゴールドパートナーで、語学力などなどを生かしたボランティア活動を社員に呼びかけ、手を挙げた約2千人から選抜したという。
今後、リーダー役を担うための同社独自の研修や、他イベントでの実地訓練などを行う予定という力の入れようだ。
ボランティア活動には積み立て休暇や有休を利用して参加してもらう予定だという。
富士通の広報担当者は「当社はこれまでにも、さまざまなボランティア活動に参加しており、今回もボランティア活動を通じて良い経験を積んで、仕事に生かして欲しい」と話している。
大会組織委員会は、8万人のボランティアの公募に先だって、大会スポンサーになっている45社の国内パートナーに1社当たり300人のボランティアを参加してほしいと要請を出したという。公募だけで8万人を確保するのが難しいと考えたと思える。
しかし、冷静によく考えてみると、富士通のボランティアは、「企業派遣ボランティア」で、本来のボランティアではなく、企業のイメージアップを狙う「社会貢献」の範疇だろう。富士通のボランティアは、休暇を利用するにしても、有給休暇で、給料は保証されているである。
大会組織委員会には、電通、JTB、NTT、東京都などから派遣されたスタッフが大量に働いている。いずれも、組織委員会からは報酬を受け取っていない。しかし、給料は派遣元の組織からしっかり支払われているので「奉仕」でもなんでもない。
電通、JTB、NTTからボランティアが参加したにしても、富士通のボランティアと同様に給料はしっかり保証されている。さらに、こうした企業は、大会開催の業務を組織員会から受注し、数千億円の収入を得る「業者」なのである。
もはや、そこには善意も奉仕も感じ取ることはできない。
巨大なオリンピック・ビジネスの一端を担っている企業のビジネス活動の一環と見なすのが妥当だろう。
- 「平成の学徒動員」? 文科省とスポーツ庁 ボランティア参加を促す通知
- 7月26日、文部科学省とスポーツ庁は、東京オリンピックのボランティアの参加を促す通知を全国の大学や高等専門学校に出した。
通知では、東京オリンピックのボランティアの参加は、「競技力の向上のみならず、責任感などの高い倫理性とともに、忍耐力、決断力、適応力、行動力、協調性などの涵養の観点からも意義がある」とし、「学生が、大学等での学修成果等を生かしたボランティア活動を行うことは、将来の社会の担い手となる学生の社会への円滑な移行促進の観点から意義がある」とした。そして「特例措置」として、東京オリンピック・パラリンピックの期間中(2020年7月24日~8月9日、8月25日~9月6日)は、「授業・試験を行わないようにするため、授業開始日の繰上げや祝日授業の実施の特例措置を講ずることなどが可能であり、学則の変更や文部科学大臣への届出を要しない」とした。
学生がボランティアに参加しやすくするために、大会期間中は授業は休みにし、期末試験も行わなず、連休などの祝日に授業を行って欲しいという要請で、こうした対応は文科省への届け出なしに各大学や高等専門学校の判断で自由にできるとしたのである。
また、これに先立って、4月下旬には、「各大学等の判断により、ボランティア活動が授業の目的と密接に関わる場合は、オリンピック・パラリンピック競技大会等の会場や、会場の周辺地域等におけるボランティア活動の実践を実習・演習等の授業の一環として位置付け、単位を付与することができる」とする通知を出し、学生のボランティア参加を促すために、単位認定を大学に求めている。
とにかく異例の通知である。
東京オリンピックのボランティアは、大会ボランティアが8万人、都市ボランティアが3万人、合計11万人を確保する計画だが、これだけ大量の人数が確保できるかどうか疑問視する声が起きて、危機感が漂っていた。
ボランティアの要求条件は、大会ボランティアで「10日間以上」、都市ボランティアで「5日間以上」、さらに事前の説明会や研修への参加義務があり、働いている人にとってはハードルが高い。一方で「2020年4月1日で18歳以上」という年齢制限がある。そこで大学生や高等専門学校、専門学校の学生が「頼みの綱」となる。
この「特例措置」対して、明治大、立教大、国士舘大などが東京五輪期間中の授業、試験の取りやめを決定した
明治大は「自国でのオリンピック開催というまたとない機会に、本学学生がボランティア活動など、様々な形で大会に参画できる機会を奪ってしまう可能性がある」(7月26日)として、五輪期間中の授業を取りやめ、穴埋めとして同年のゴールデンウィークの祝日をすべて授業に振り替えるという。
立教大も「学生のボランティア活動をはじめとする『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会』への多様な関わりを支援するため」(8月9日)休講に。国士舘大も「学生の皆さんがボランティアに参加しやすいよう2020年度の学年暦では以下の特別措置を準備しています。奮って応募してください」(18年8月9日)と呼びかけている。(WEBRONZA 小林哲夫 8月31日)
しかし、一方で「平成の学徒動員」と反発する声も強い。
大会組織委員会や東京都が、ボランティアへの参加を呼びかけるのは当然だが、文科省やスポーツ庁が乗り出し、「特例措置」まで設けてボランティアの参加を後押しするのは行き過ぎだろう。「平成の学徒動員」という批判だ巻き起きるのも理解できる。
善意と奉仕の精神と自発性を重んじるボランティアの理念と相いれない。
ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!
ボランティア募集 大会組織委員会/日本財団
- オリンピックは巨大なスポーツ・ビジネス
- 国際オリンピック委員会(IOC)は、2013年から2016年の4年間(ソチ冬季五輪とリオデジャネイロ夏季五輪)で51億6000万ドル(約5830億8000万円)の収入を得た。2017年から2020年の4年間(平昌冬季五輪、東京夏季五輪)では60億ドルを優に超えるだろう。また、IOCとは別に2020東京大会組織員会の収入は6000億円を見込んでいるので両者を合わせると1兆円を上回る巨額の収入が見込まれているのである。
もはやオリンピックは巨大スポーツ・ビジネスで、非営利性とか公共性とは無縁のイベントといっても良い。スポーツの感動を商業化したビック・イベントなのである。
オリンピックの過度な商業主義と膨張主義は、批判が始まってから久しい。
そもそも、善意と奉仕を掲げるボランティアの精神とオリンピックは相いれない。
東日本大震災や熊本地震、北海道胆振地震、西日本豪雨で活躍している災害ボランティアとは本質的に違う。
2012年ロンドン五輪では、7万人の大会ボランティアと8000人に都市ボランティアが参加し、2016年リオデジャネイロ五輪では、5万人の大会ボランティアと1700人のシティ・ホストが参加した。
リオデジャネイロ五輪では、5万人の大会ボランティアの内、1週間で1万5000人が消えてしまい、大会運営に支障が出て問題になったのは記憶に新しい。
また平昌冬季五輪では、2万2000人のボランティアが参加したが、組織委員会から提供された宿泊施設(宿泊料は組織委員会が提供し無料)の温水の出る時間が制限されたり、氷点下の寒さの中で1時間以上、送迎バスを待たされたりして、2400人が辞めてしまった。
勿論、ボランティアは無償(リオ五輪のシティ・ホストは有償 但しリオ市内の貧困層を対象とした福祉政策の一環)、報酬は一切支払われていない。国際オリンピック委員会(IOC)の方針なのである。
無報酬のボランティアの存在がなければオリンピックの開催は不可能だとIOCは認識しているのである。
東京大会組織委の担当者が日当を払うことの是非について、IOCに尋ねた際、「それだとボランティアではなくなる」などと言われたという。IOCのコーツ副会長は9月12日の記者会見で「今後もボランティアに日当を払うことはない。やりたくなければ応募しなければいい」と強い調子で話した。(朝日新聞 9月27日)
一方、「ブラックボランティア」の著書がある元広告代理店社員の本間龍氏は「今のオリンピックはアマチュアリズムを装った労働詐欺だ」と多額の金が集まるオリンピックでボランティアは大きな役割を担うのだから必要な人員は給料を払って雇うべきだと主張する。(TBS ニュース23 9月26日 「五輪ボランティア募集開始 『ブラックだ』批判のワケ」)
これに対し、小池東京都知事は、「ボランティアへの待遇は過去の大会と遜色のないものになっている。何をもってブラックだと言うのか分からない」と真っ向から反論した。
五輪ボランティア説明会・面談会場 東京スポーツスクエア 東京都千代田区有楽町
- 五輪ボランティア説明会始まる 480名が参加
- 2019年2月9日、2020東京五輪大会の応募者に対する説明会と面談が、東京都千代田区有楽町の東京スポーツスクエアで始まった。こうした説明会と面談は、北海道から九州まで全国11か所で7月末まで開かれる。
この日は、首都圏は雪に見舞われたが、大会ボランティア(フィールドキャスト)が360人、都市ボランティア(シティキャスタト)が約120人、合わせて約480人の応募者が参加した。
説明会は、活動内容やスケジュールについての説明をするオリエンテーションだけでなく、応募者同士の自己紹介やクイズ、ゲームなども交えて和やか雰囲気の中で進められ、ボランティア同士のコミュニケーションを図った。
その後、大会組織委員会の担当者は応募者との面談を行い、第一回目のマッチングの審査を実施した。20万人を超える応募者から8万人に絞り込む「第一次選考」である。「第一次選考」でどの程度の絞り込みが行われるかは大会組織委員会では明らかにしていない。
マッチングが成立した応募者には、9月頃までに研修のお知らせのメールが、順次、送付され、次の段階に進んで2019年10月から始まる共通研修に臨む。いわば「第二次選考」である。この段階で約8万超程度に絞り込みが行われると思われる。
共通研修終了後、2020年3月以降に、大会ボランティアについては、「役割・会場のお知らせ」、都市ボランティアについては「採用通知」が送付されることで、最終的にボランティアとして採用されるかどうかが決められる。採用されたボランティアは、2020年6月から、大会ボランティアについては会場別研修、都市ボランティアについては配置場所別研修を受ける。
なお海外在住の大会ボランティア応募者、約7万人については、2019年3月から7月にかけてテレビ電話等でオリエンテーションを行う。事実上の選考であるマッチングの審査は個別に連絡を取りながら実施すると思われるが、面談を行わないので作業は難航が予想される。マッチングが成立して採用された応募者は、来日して2020年6月以降に実施される会場別研修から参加する。渡航費用も必要となるので、果たして何人が実際に会場別研修に参加するのか懸念は残る。
大会ボランティアの受付 都市ボランティアの受付は背中合わせの隣に
大会ボランティアの説明会
都市ボランティアの面談 大会組織委員会担当者2名と応募者2名が一つのテーブルで面談
大会ボランティアの面談 事実上の「面接試験」 説明会とは違って応募者は緊張した表情
面談会場にはボランティアのユニフォームや帽子、靴が展示 試着可能
都外の説明会と面談開催スケジュール 東京スポーツスクエアでは、2月9日から5月下旬まで、90日程度開催予定
出典 東京2020大会組織員会
- 東京2020大会ボランティア、目標の8万人達成 外国籍の応募者44% 新たな課題浮上
- 2018年11月21日、大会組織委員会は、大会ボランティアの応募者が、20日午前9時時点で8万1035人に上り、目標の8万人を達成したと発表した。 注目されるのは応募者の44%が外国籍で半数近くに達したことである。希望活動分野は「競技」が最も多く、「式典」「運営サポート」も人気が高かった。これに対して「移動サポート」などは希望者が少なく12月21日まで募集を継続するとしている。
大会ボランティアの募集は2018年9月26日に開始し、当初は「1日8時間程度、合計10日以上」といった応募条件が「厳しすぎる」との懸念が出ていたが、2カ月弱で目標に達した。
応募完了者の8万1035人に対し、応募登録者は132,335人に達している。
募集にあたっては、英語サイトも開設し応募を受け付けた。日本語を話せることは条件はない。結果、外国籍に応募者が半数近くの44%にも達した。
大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は「多くの方に応募していただき、感謝している」と述べた上で、外国籍の人が多かった理由については「確たることを言うのは難しい。海外でのボランティア活動への積極的な受け止め方もあるのだろう」との見方を示し、「(応募者と活動内容の)マッチングを適切にしたい」と語った。
組織委によると過去の大会では、採用された外国籍の人の割合は10%以下が多かったという。
応募者の全体で見ると、男女別では女性が60%、男性が40%。年齢層は20代が最多の32%で、10代から80歳以上まで幅広い年代にわたった。
しかし、日本国籍の応募者に限ると50代(22%)が最も多く、20代(12%)、30代(11%)は少なかったという。
応活動希望日数は、10日が33%、11日以上が65%で、30日以上が19%となっている。
応募締切は、2018年12月21日(金)17時だが、視覚に制約がある応募者は、2019年1月18日(金)17時の締切(専用の応募フォーム提出期限)となっている。
東京2020大会のボランティア募集がこれだけ海外から注目を浴びたのは喜ばしいことではあるが、日本語を話せることが条件ではないため、活動分野のカテゴリーによっては、大会関係者とのコミュニケーションがうまく行かない懸念も生じる。また、「土地勘」がない場所でのボランティア体験には、ボランティア自身がとまどう状況も十分想定しなければならない。
さらに、国内籍の応募者は、2019年1月~7月の間にオリエンテーション(説明会・面接)や2019年10月からは共通研修、2020年4月からは役割別・リーダー研修、そして6月からは会場別研修に参加しなければならないが、外国籍の応募者は2020年6月の会場別研修から参加すれば良いことになっている。明らかに日本籍と外国籍の応募者の間には研修内容に有意差があり、十分なトレーニングが行うことができるか疑念が残る。(下記 ボランティアジャーニー参照)
大会運営上の観点だけで考えると、日本国籍の応募者を主体にする方が効率的かもしれない。
また来日する外国籍のボランティアに対して、宿泊などは自己責任としながらも、大会組織委員会はきめ細かなサポート体制を整える必要も迫られてきた。
外国籍のボランティア、長期に渡る滞在施設の確保や航空券の手配などハードルが高いため、ボランティアに採用されても来日を断念するケースも多発する懸念がある。
大会組織委員会では、「マッチングを適切にしたい」とし、暗に外国籍ボランティアの採用を厳しく審査する方向性を示唆している。
しかし、応募者の半分近くに達した外国籍のボランティアの採用数が、日本国籍と外国籍との間で大幅な格差が生じると、国際社会からは「差別」だと見られて大きな批判を招く可能性がある。大会組織委員会が採用の審査を適切に実施した結果だと説明にしても、審査の結果、外国籍の採用数が何人になるかが問われることになるだろう。外国籍のボランティアの採用数を抑えることは、国境を越えた連帯を掲げるオリンッピク精神に明らかに背くことになる。
「外国籍の応募者44%」、大会組織委員会は大きな難題を抱えた。
- 東京2020大会ボランティア 応募完了者20万4680人
- 2019年1月25日、大会組織委員会は東京2020大会ボランティアについて、視覚に制約のある方等の募集を締め切り(2019年1月18日)、応募者完了者の合計は、204,680人となったとした。
大会ボランティアの応募者の構成については、男性が 36%、女性が 64%、国籍は、日本国籍64%、日本国籍以外 36%、活動希望日数は、10日未満 2%、10日 37%、11~19日 33%、20~29日 12%、30日以上 16%としている。
日本国籍以外の外国人が約4割近くも占め、応募完了者の総数を押し上げに大いに貢献した。活動希望日数が多かった理由も日本国籍以外の応募者が多かったことが上げられるだろう。
昨年12月21日に募集は締め切られたが、応募登録手続きのプロセスにトラブルが発生し、約2万6000人が登録できなかった可能性があることが明らかになった。
募集最終日にアクセスが集中し、応募者に最終認証用の電子メールが送れないなどの不具合が発生したのが原因とした。
大会組織員会は、これまでに対象者には個別に連絡を取り、手続きの完了を依頼するなどの対応を完了した。
応募完了者には、2019年1月からオリエンテーションの案内が送られ、2月以降、東京、大阪、名古屋など全国12カ所で面接や説明会などのオリエンテーションが始まる。そして応募者の希望活動分野とのマッチング(すり合わせ)が行われ、共通研修を受ける人の採用可否が決まる。採用された人は、10月以降に共通研修が行われ、2020年3月に正式に採用が決まり、活動場所や役割が通知される。
都市ボランティアの募集 出典 東京都
東京都は広瀬すずが出演したボランティアの募集のCMの制作に約4000万円かけた。
- 都市ボランティア、応募者は3万6649人 2万人の募集枠を大幅に上回る
- 2018年12月26日、東京都は2万人の新規募集枠に対し、3万6649人の応募者があったことを発表した。
約1カ月前の11月21日では、応募者は1万5180人にとどまり、まだ約5000人足りなかったが、終盤になって一気に応募者が増え、1週間前の12月19日に発表した応募者数は2万8689人と募集枠の2万人を上回った。さらに最後の1週間で約1万人の駆け込み応募があった。
応募者の性別は、男性が約40%で女性が60%で、幅広い世代に広がっているという。また外国籍の応募者は約10%とした(小池都知事 12月17日)。
2019年1月には、応募者に対して案内状が送られ。2月から面接・説明会などのオリエンテーションが始まる。そして共通研修を受ける人の採用者が決まり、採用された人は9月から共通研修を受ける。2020年3月に、正式に採否が決まり、採用された人には活動場所や活動内容が通知される。
12月21日、都教育委員会は、「都市ボランティア」の募集をめぐって、ある都立高校で担任の教諭がクラスの生徒に応募用紙を配り、「全員出して」と言っていたことを明らかにした。担任の教諭に強制する意図はなかったとする一方、「強制と感じた生徒もいるようで、参加は任意だという説明が足りなかった」と指摘した。
「都市ボランティア」は」、2020年4月時点で18歳以上の人が参加可能だ。募集締め切りの直前、12月19日にツイッター上で応募用紙の写真を添えて「とりあえず書いて全員出して!って言われたんだけど都立高の闇でしょ!」との投稿があり、「学徒出陣だ」といったコメントとともに拡散したという。(朝日新聞 12月22日)
出典 東京都
- 8万人採用 12万人不採用
- 2019年9月12日、大会組織委員会は、書類選考と面談による「第一次選考」(マッチング)が終了し、大会ボランティア(フィールドキャスト)約8万人が決まったと発表した。応募した人は、約20万人、12万人が不採用となった。月内に、応募した約20万人全員に結果を通知するという。
大会組織委員会によると、採用された人の約6割は女性で、40~50歳代が約4割に上った。応募段階では全体の36%だった20歳代は、面談への出席率が低く、採用は16%だった。
また外国籍の人は12%で、中国、韓国、英国など約120の国と地域から採用された。
採用された人は10月から共通研修に参加して、来年3月以降に具体的な役割と活動する会場が決まる。出典 IOC
- 「無観客」の決定で、混乱したボランティアの活動
- 大会開幕まで15日に迫った7月8日、政府は緊急事態宣言の発令(7月12日から)、これを受けて東京五輪大会の五者協議・関連自治体連絡協議会が開かれ、「無観客」開催が決まった。東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県の会場はすべて無観客で開催されることになり、これにより観客誘導、会場整理などの仕事がほとんど無くなり、都市ボランティアのオリンピック期間の活動予定を⼀旦すべてキャンセルした。
その後、都市ボランティアの意⾒も踏まえ、「⼤会の応援」「⼤会情報の提供」「東京・地域の魅⼒発信」「安全・安⼼な⼤会開催のサポート」等の新たな活動について再募集を開始した。1万人以上が再募集に応じた。
一方、6月ごろからアルバイト募集サイトには、「国際的なスポーツイベント」の運営スタッフの募集が目立つようになった。内容を見ると会場整理など五輪のボランティアと変わらないように見えるのに、報酬は「時給1500~2000円」「日給1万5000円」など比較的好待遇だ。無観客開催が決まった後も募集は続き、実際に五輪の会場で働いたアルバイトがいた。
ボランティアの活動が縮小される一方で、アルバイトが雇われているのはなぜか。組織委は、「アルバイトについては、委託事業者の従業員であると承知しています。自主的に参加いただくボランティアと、委託事業者として働くスタッフでは、活動期間や、役割や職務(活動)に対する責任の有無など、大きく異なる。両者は役割や職務(活動)に対する責任の有無など、スタッフとしての性質が大きく異なり、代替の関係にはない」とした。
ボランティアとアルバイトは役割や職務に対する責任が違うので同列には扱えないということである。しかし、選手の通訳やドーピング検査のスタッフなど専門的な役割を担ったり、車で選手の送迎を行ったりするボランティアもいる。ボランティアの責任が軽いとは言えないのではないだろう。
東京五輪のシティキャストのユニホームと、フィールドキャストのユニホーム 出典 Tokyo2020
- 東京都、都市ボランティア3万人放置 「新たな活動」連絡せず 五輪開幕に間に合うか「分からない」と準備局
- 東京五輪の無観客開催で、街頭での道案内など従来の役割がなくなった約3万人の都市ボランティアに対し、都が示すとしていた「新たな活動」について、大会開幕2日前になっても連絡が行われていないことが分かった。都オリンピック・パラリンピック準備局は「できるだけ早くお伝えしたい」としているものの、五輪の開幕に間に合うかは「分からない」と説明。ボランティアからは戸惑いの声が上がった。
都の都市ボランティアは、7月8日の東京五輪の無観客開催決定により、当初予定していた駅での道案内やパブリックビューイング(PV)会場での来場者対応など役割の多くが消滅した。都は7月9日、全員に送付したメールで、活動が取りやめになったことを伝える一方「東京の魅力発信」など新たな活動を取りまとめて改めて連絡するとしていた。
ところが21日になっても都は個別に活動を依頼したごく一部のボランティアを除き連絡はしておらず、今後の具体的な活動内容は不明なまま。一方、新たな活動を示せたとしてもこの活動に3万人分を割り当てるのは困難とみられる。
都市ボランティアの1人は、「ボランティアの中には、予定などを空けている人も少なくない。無観客で活動がないことは覚悟しているが、せめて連絡はほしい」と不満を漏らした。
都は「ぎりぎりで無観客となり、対応に時間がかかってしまっている」と釈明。一方、パラリンピックについては有観客を前提に準備を進めているとして「1人でも多くの方に参加してほしい」としている。
首都圏の他自治体では神奈川県内は横浜市が9日に活動中止を決定し約2000人の参加予定者に連絡。藤沢市も取りやめを約800人の参加予定者に伝え別の活動への参加意向を打診した。
約1300人が活動予定だった千葉県はオンラインで地元PRなどに参加してもらう。約4200人が参加予定だった埼玉県は案内などに代えて選手の出迎えなどを行う方針を先週表明している。(東京新聞 7月22日)
出典 IOC
- 大会ボランティアを表彰 7万970人、最年長は91歳
東京五輪 閉会式 出典 IOCMedia
8月8日、国立競技場で行われた東京オリンピックの閉会式で大会ボランティアが表彰された。国際オリンピック委員会(IOC)アスリート委員のフェンシング五輪2大会連続銀メダリストの太田雄貴氏(国際フェンシング連盟副会長)らから、8人のボランティアが記念品を受け取った。
組織委員会が募集した大会ボランティアは競技会場や選手村などで活動する「フィールドキャスト」と呼ばれ、合計7万970人(オリンピック/5万1672人 パラリンピック/2万4514人)が活動した。オリンピック・パラリンピックの双方で活動した人が5,216人いるので、活動した延べ人数は7万6186人となった。
女性(4万1289人)が男性(2万9677人)と比べて約2倍に上った。
年齢別では20代が最も多く1万7354人、最年少の参加者は19歳、90代の参加者は3人いて、そのうち最年長は91歳だった。
▼年代別参加者数
10代/2,112人、20代/17,354人、30代/8,112人、40代/11,972人、50代/16,815人、60代/11,640人、70代/2,823人、80代以上/142人
▼男女別参加数
男性/29,647人 女性/41,289人
▼国籍
日本籍/63,878人 外国籍/7,092人
- 組織委員会の大会ボランティアの総括 コロナ下の逆風五輪、成果強調
- 2021年6月21日、東京オリンピック2020組織委員会は、大会の総括事業報告を発表、大会には205の国・地域から選手約1万1400人、パラは161の国・地域から約4400人が参加し、支えたボランティアは約8万5000人程度(大会ボランティアと都市ボランティアの合計)に上った。
大会ボランティアについて以下の通りに総括した。
▼ボランティアの活躍に向けた取組 ボランティアへの研修・ユニフォーム配布の実施
既に役割・会場が決まったボランティアに対して、4月以降、役割や会場ごとに必要な知識を習得する役割別研修・会場別研修を実施した。感染防止に配慮し、実施に当たっては、可能な限りオンラインやe-learning を活用した。
また、ボランティアリーダー候補者に対しては、4月以降、リーダーシップ研修をすべてオンライン及びe-learning を活用して実施した。
5月以降はボランティアに対して、ユニフォーム等をUAC(ユニフォーム・アクレディテーション配布施設)にて配布した。配布に際しては、来場者にマスク着用の徹底やフィジカル・ディスタンスの確保など、新型コロナウイルス感染症対策に十分配慮した対応を行った。配布は都内のほか、競技会場のある北海道、宮城県、福島県、茨城県、静岡県でも実施した。
▼大会時の活動
東京2020 大会は暑熱環境下及びコロナ禍の中開催されたことから、ボランティアが安全・安心に活動できるよう、事前に暑さ対策と新型コロナウイルス感染症対策等の研修動画を配信することで周知を図るとともに、暑さ対策グッズ(塩分補給食品、ボディシート等)やコロナ対策グッズ(フェイスカバー、消毒液)の配布、体調管理ノートによる健康管理、PCR検査の実施、希望者へのワクチンの接種、黙食の呼びかけといった各種対策を行った。
大会期間中のボランティアの活躍に対して、SNS上では「真のMVPです」、「東京には最高のボランティアがいた」、「すべてに多大な敬意を払いたい」など国内外から絶賛する声が寄せられた。また、各国選手等からも「献身と努力に対してすべてのボランティアに感謝します」、「オリンピックをとても思い出深い素晴らしいものにしてくれてありがとう」などボランティアのおもてなしに感謝や称賛の声が数多く寄せられた。
▼ ボランティアアンケートの実施
東京2020 オリンピック後とパラリンピック後にそれぞれボランティアに対して任意のアンケートを実施した。アンケートの総回答数(オリンピック及びパラリンピック合わせた回答数)は、11,893 件であった。
アンケートでは、活動に参加した理由や仲間に向けてのメッセージのほか、活動する前後の自身の気持ちの変化などをヒアリングした。
「大会後も、スポーツボランティアの活動を続けていきたいか」の問いに対し、8割以上が「はい」と回答し、「活動してよかった」「一生の思い出となるような、貴重な体験ができた」といったコメントが寄せられ、大会ボランティアの活動に対する高い評価が窺えた。特にパラリンピック後のアンケートでは、パラスポーツの魅力、障がいのある人とのコミュニケーションでの気付きなどが貴重な経験になったという声が目立ち、ボランティア自身が東京2020 大会のコンセプトである多様性と調和を実践できたと考えられる。
- シティキャスト活動記録 東京都 無観客開催の大会におけるシティ キャストの活躍
- 新型コロナウイルスの感染拡大により、大会直前にライブサイトの中止や無観客開催が決定され、シティ キャストの主な役割である観客案内の活動が中止となった。
しかし、都は「大会で活動したい」というシティ キャストの声も踏まえ、「大会の応援」、「東京・地域の魅力発信」、「安全安心な大会運営のサポート」など新たな活動機会を用意し、参加者を再募集した。
この活動記録は、こうした活動へ参加し、大会を盛り上げたシティ キャストの活躍をまとめたものだ。
出典 シティキャスト活動記録 東京都
① 来場者案内、大会情報の提供
東京スポーツスクエア1階エリアにおいて、来場者へ館内の案内や大会情報の提供等を行った。また、タブレット端末や遠隔操作のロボットを通じたリモートでの来場者案内も行った。 延べ2297人
② 公開収録(東京・地域の魅力発信等)
東京スポーツスクエア1階入口付近の特設スペースにて、シティ キャストによる東京・地域の魅力を伝えるプレゼンテーションを実施。 延べ53人
③ メディア関係者の案内
東京スポーツスクエア内に設置された 「東京都メディアセンター」等で、国内外から訪れたメディア関係者に対して様々な案内を実施。 延べ957人
④ 選手等のお迎え、お見送り
羽田空港において、各国選手・関係者の来日時のお出迎えや帰国時のお見送り等 延べ2620人
⑤ 来場者への声掛け(感染症・暑さへの注意喚起)等
大会期間中、聖火台が設置された夢の大橋周辺やマスコットガーデンにおいて、来場者へ聖火台観覧自粛のお願いや直行直帰のお声掛けを行う。あわせて、熱中症の注意喚起や暑さ対策グッズを配布。 延べ3784人
⑥ 来場者案内、声掛け等
都庁内に設けたオリンピック・パラリンピック関連展示の周辺にて、来場者の案内 延べ446人
⑦ 「みんなの東京2020応援チャンネル」収録・配信会場サポート
日比谷野外音楽堂と東京都庁で実施された、特設サイト『みんなの東京2020応援チャンネル』特別コンテンツの収録・ライブ配信における会場運営のサポート、応援メッセージ映像の収録などを行う。 延べ204人
⑧ 来場者案内、会場運営サポート等
大会期間中、パラ競技の体験や、競技用具の展示など、パラリンピックの魅力を紹介する期間限定の施設『 パラリンピックギャラリー銀座』 において、来場者の案内を行う。 延べ290人
⑨ パラ競技・パラアスリートへの応援メッセージ作成
パラ競技やパラアスリートへ向けた応援メッセージパネルを作成し、大会関連施設等に掲出したほか、国内の各競技団体に届ける。 延べ1083人
⑩ パラリンピック集火式・点火式における来場者の案内、暑さ対策グッズの配布等
パラリンピック集火セレモニー開催に合わせ、都民広場において打ち水を行った他、庁舎内にて来庁者への案内や代々木公園で行われた点火セレモニーで、うちわやネッククーラーなど暑さ対策グッズの配布等を行った。 延べ50人
⑪ 学校連携観戦のため会場へ向かう児童・生徒の案内
パラリンピックでの学校連携観戦プログラムで競技会場を訪れた児童・生徒たちを、会場入口付近にてお出迎え及びお見送りを実施。 延べ403人
⑫ 来場者の案内、暑さ対策グッズの配布等
オリパラ競技が体験できるイベント「2020 FAN ARENA」「2020 FAN PARK」会場周辺において、来場者の案内や熱中症の注意喚起、および暑さ対策グッズの配布を行う。 延べ468人
⑬ パラリンピックマラソン沿道付近における観戦自粛の呼びかけ
パラリンピックマラソン競技当日、午前4 時台から、コース沿道付近およびその最寄駅等にて、沿道観戦自粛の呼びかけを行う。 延べ1256人
⑭ 大会への応援メッセージ、東京・地域の魅力をウェブサイトから発信
シティ キャストから寄せられた「大会を盛り上げたい」というご意見を踏まえ、シティ キャストの皆様から大会への応援メッセージや東京・地域の魅力を国内外に伝える写真・動画を募集し、東京2020大会東京都ポータルサイトへ掲載するとともに、選手村やメインプレスセンター (MPC) 等でも紹介。
7月18日から9月6日までの51日間で、活動人数の合計は、11,913人(東京都)、活動回数は20,676に達した。
ボランティアの年代は、20代2%、30代6%、40台15%、50代31%、60代24%、70代13%、80代以上2.3%、性別は女性62%、男性が37%だった。
東京都以外で競技会場が設けられた札幌市、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、静岡県の都市ボランティアも会わせると15,698人が活動した。
出典 シティキャスト活動記録 東京都