- リオデジャネイロ五輪 波乱の幕開け
南米で初めて開催されるリオデジャネイロ五輪(リオ五輪)、8月5日開幕した。
オリンピックは8月5日(金)から8月21日(日) の17日間、パラリンピックは9月7日から9月18日の12日間、ブラジル・リオデジャネイロで開催される。
オリンピックには史上最多の205の国と地域から約1万が参加、国際オリンピック委員会(IOC)が今大会で初めて設けた「難民選手団」の10選手も出場した。またIOCから資格停止処分を受けているクウェートの選手は個人資格での出場となった。
開催される競技数は、ゴルフと7人制ラグビーが新たに加わり、28競技、306種目となった。
パラリンピックは新たにカヌーとトライアスロンが加わり、22競技528種目が行われ、過去最多の176カ国・地域から選手約4350人が参加予定だ。
競技会場は、サッカー以外は全てリオデジャネイロ市内で行われ、マラカナン、バーラ、コパカバーナ、デオドロの4つの地区で開催されている。開会式と閉会式は“サッカーの聖地”と言われているマラカナン競技場で行われる。サッカー王国、ブラジルらしい開催計画だ。バーラ地区に建設中のオリンピック・パークには、水泳や体操、バスケットボール、テニス、柔道、選手村、メディア施設など多くの施設が整備される。建設工事の遅れで、オリンピッ開幕まで間に合うのかという懸念がされていたが、なんとか工事は間に合ったようである。しかし市街地とオリンピックパークを結ぶ地下鉄の完成はわずか4日前の8月1日、世界各国の選手団を迎える選手村はトラブル続き、オーストリアの選手団は一時、入村を拒否する事態となった。
また開会式直前には市内各地で五輪開催に反対するデモが起きるなど“波乱”含みのスタートとなった。
しかし、競技が始めれば、そんなトラブルとは関係なく、熱戦が繰り広げられている。序盤戦では、男子400メートル個人メドレーで萩野公介選手、男子体操(団体)、男子73キロ級で大野将平選手、続いて男子体操(個人総合)で内村航平選手、柔道女子70キロ級で田知本遥選手、柔道男子90キロ級のベイカー茉秋と金メダルが続いている。メダル獲得数も早くも2けたに乗り、史上最多の38個(金7、銀14、銅17)獲得した2012年ロンドン五輪に近いペースで、日本勢は好調なスタートを切った。これからリオデジャネイロ五輪(リオ五輪)では、どんな名場面を繰り広げてくれるのか、日本選手の活躍はどうなるのか、今年の夏は楽しみである。
リオデジャネイロ五輪開会式 出典 OCOG Rio2016



- ギリシャ・オリンピアで行われた五輪聖火採火式 出席できなかったルセフ大統領
五輪発祥の地 ギリシャ・オリンピアで行われた五輪聖火採火式(2016年4月21日)巫女姿のギリシャの女優のカテリナ・レホウが太陽光を使って火を起こして採火した。(出典 IOC)
ブラジル国内の聖火ランナーの第一走者に聖火を渡すルセフ大統領 ルセフ大統領は開会式には欠席(出典 Rio2016)
- 2016年4月21日、リオデジャネイロ五輪の聖火の採火式が、オリンピック発祥の地、ギリシャの神殿跡で行われ、3か月余りにわたる聖火リレーが始まった。
聖火はギリシャ国内でリレーされた後、ブラジルに運ばれ、5月3日に首都ブラジリアを出発し、300以上の自治体を回り、開幕前日の8月4日にリオデジャネイロ入りする予定である。
採火式には当初、ブラジルのルセフ大統領が出席を予定していたが、政府会計の不正操作疑惑を巡って同氏の弾劾手続きが進んでいることなどから、取りやめとなった。
採火式の直前、4月17日、ブラジルの連邦下院議会は、ルセフ大統領を弾劾すべきだとする決議を可決し、引き続き上院でも可決され、ルセフ氏は180日間の職務停止に追い込まれた。弾劾裁判の決定は8月上旬のリオデジャネイロ五輪開催中に行われる見通しで、五輪開催期間中に大統領が失職するという前代未聞の事態が起きることが現実味を帯びてきた。
ルセフ氏は「私は逮捕もされていないし、罪を犯した証拠もない」と潔白を主張。職務停止に追い込まれたルセフ氏に代わって大統領代行となったテメル氏を「陰謀をたくらむリーダー」と批判し、徹底抗戦の姿勢だ。
一方で、ブラジルの世論は分裂し、各地で市民がルセフ大統領への応援と抗議のデモが行われ、五輪開催を控えたリオデジャネイロ市でも44万人以上が参加したとされている。
ブラジルの政治状況はさらに混迷を深め、五輪開催ムードは消し飛んでいる。
出典 Rio2016
- 混迷加速 ブラジル 五輪開催に暗雲
- ところが、オリンピックの初の南米開催という“栄誉”を手に入れたブラジルは混迷を極め、大会が本当に無事開催されるのか、危ぶむ声が消えない。
世界経済の失速で資源価格が暴落し、ブラジル経済が“崩壊”寸前だ。
ブラジルレアルは、2015年9月下旬、1ドル(US)=4.1783レアルと史上最安値を更新、年初から36.4%の下落率となった。主要新興国で最悪の下落率である。
2015年7~9月期の国内総生産(GDP)の実質経済成長率は、前年同期比で4.5%と大幅に減少した。マイナス成長は6四半期連続。1996年に現行調査を始めてから、最大の落ち込み幅だったという。
2015年9月、スタンダード&プアーズ(S&P)はブラジルの債務を「ジャンク(投機的)級」に格下げした。さらに2016年2月、「ジャンク(投機的級)」の領域でさらに1段階引き下げ、これまでの“BB+”から“BB”とした。またブラジルの格付け見通しを「ネガティブ」に指定した。“BRICS”の一翼を担い、世界から脚光を浴びていたブラジル経済の面影は消え去ってしまった。
2016年になって、ブラジルの最大の貿易相手国である中国経済の失速が深刻な影響を与えている上に、与党議員らが絡む汚職問題で政治も混迷を深め、ほとんど機能不全、経済の低迷に拍車をかけている。ブラジルの復活の兆しはまったく見えない。
加えてジカ熱の問題が浮上した。2016年1月、世界保健機関(WHO)は感染症のジカ熱が「爆発的に拡大」しており、アメリカ大陸で300─400万人が感染する恐れがあると警告した。ジカ熱の最も感染が拡大しているブラジルで、感染者数は今後150万人に上る可能性があるという。
ゴルフの松山秀樹選手は、ジカ熱問題を理由に五輪出場を辞退、世界各国の有力ゴルフ選手も出場辞退が相次いでいる。
6月、世界保健機関(WHO)の専門家チームは、ブラジルでの夏季五輪開催の影響でジカ熱がさらに世界的に広がるリスクは「非常に低い」との見解を示した。リオデジャネイロ五輪の開催都市を含め、ジカ熱感染がみられる国、地域、および領地への渡航や貿易について「一般的制限を設けるべきではない」とする先に示した見解を改めて確認し、リオデジャネイロ五輪開催懸念への沈静化を図った。しかし、ジカ熱への不安は一向に収まる気配はない。
オリンピック観戦で訪れる海外からの観光客に相当の影響が出そうだ。国内経済の混乱も伴って、入場券の売り上げも伸び悩んでいるという。
あれこれ難問を抱えて“リオデジャネイロ五輪”は開幕した。
- 深刻 五輪を揺るがすドーピング問題
- 2016年6月21日、国際オリンピック委員会(IOC)は、スイス・ローザンヌで国際競技団体など関係者を集めた「五輪サミット」を開き、組織的なドーピング(禁止薬物使用)違反でロシア陸上競技連盟を資格停止処分にした国際陸上競技連盟の決定を支持した。ただし、個々の選手に対しては条件付きでリオデジャネイロ五輪への参加を認めた。国際陸連が認めたドーピングに関与していない国外拠点の選手、またはスポーツ仲裁裁判所(CAS)が潔白であると認めた場合はロシア選手団として出場が可能で、完全に排除される事態は当面避けられた。
IOCのバッハ会長は記者会見で、違反が相次ぎ、世界反ドーピング機関(WADA)から国内機関が「不適格組織」とされたロシアとケニアを「この2カ国の選手は深刻な違反の疑義がある」と指摘して、ロシアとケニアの全競技の選手に国外のドーピング検査を義務づけ、反ドーピング対策の強い姿勢を示した。
2016年7月18日、世界反ドーピング機関(WADA)の独立調査チームは、ロシアが国家主導の組織的なドーピングを行っていたことを明らかにする報告書を発表した。
報告書の中で、WADAは国際オリンピック員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)に、リオデジャネイロ五輪にはロシアオリンピック委員会が登録した選手全員のエントリー禁止を検討すべきだと勧告した。またリオデジャネイロ五輪を含む国際大会からロシア・オリンピック委員会や政府関係者を排除すべきとしたという。
報告書によると、ロシアは2012年のロンドンオリンピックと2014年のソチオリンピックを含む2011年後半から2015年8月までの4年間、五輪競技の大半で国家主導のドーピングが計画、実行されたという。この国家的ドーピングはロシアスポーツ省が選手たちから提供された尿サンプルの操作を指揮、統括し、監督していたと指摘した。これに対してプーチン大統領は「政治の介入」強く反発した。
7月21日、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は、国際陸上競技連盟のリオデジャネイロ五輪への出場禁止処分を不服としたロシア・オリンピック委員会と同国の68選手らの訴えを棄却する裁定を発表した。
7月24日、CASの裁定を受けて、国際オリンピック委員会(IOC)は、電話会議による緊急理事会を開き、ロシア・オリンピック委員会を資格停止処分とはせず、選手には一定の条件を課して、リオデジャネイロ五輪に出場できることを決めた。条件を満たしたロシアの選手は、“ロシア選手団”として出場する道は残した。条件を満たしているかは、各国際競技団体が個別に判断に委ねるとした。
IOCが課した条件は、ロシア国内でのドーピング検査だけでなくロシア国外で受けた信頼性のある検査をクリヤーすること、過去に一度もドーピングで処分を受けていないこと、国際陸上連盟以外の27の国際競技団体が独自のルールで出場を認めた場合などとしている
国際陸連はすでにロシア選手の67人(クリシナ選手を除く)、全員の出場を認めないと決定している。今後各競技団体で個別に決定されていくが、出場を認めらるロシア選手の人数は極めて限定的となり、ロシアにとっては極めて厳しい内容となった。
開催10日余りになって、ドーピング問題はリオデジャネイロ五輪大会を根底から揺るがす大問題に発展している。
リオデジャネイロ OCOG Rio2016
- オリンピック・パークを中心に開催されるリオデジャネイロ五輪
- リオデジャネイロ五輪の競技場は、マラカナン地区(Maracanã 4競技場)とコパカバーナ地区(Copacabana 選手村 4競技場)、バーラ・ダ・チジュッカ地区(Barra
da Tijuca オリンピック・パーク 15競技場)、デオドロ総合会場(Deodoro 9競技場)の四つの地区(ゾーン)に整備された合計34の施設が使用される。この内、15の競技場は既存の競技場を使用し、17の競技場を新設、7の競技会場は仮設で対応する。開会式・閉会式、 サッカー王国ブラジルの注目のサッカー競技場は、収容人数9万人のリオデジャネイロの市街地にある既存のサッカー競技場(Maracanã
Stadium)で開催し、陸上競技は、同様に既存の陸上競技場(The João Havelange Stadium) を改修し、収容人数を 4万5000人から
6万人に拡張して開催する。
開会式・閉会式・サッカーが開催されるMaracanã Stadium リオデジャネイロ五輪招致ファイル
- マラカナン地区では、サッカーや陸上、バレーボール、アーチェリーなど、コパカバーナ地区では、トライアスロン、ビーチバレー、自転車ロードレース、セーリング、カヌーやボート競技、バーラ地区では、水泳競技やホッケー、テニス、柔道、バスケットボール、格闘技、卓球、体操などの競技が行われる。またIBC/MPC関連施設や選手村なども設置される。デオドロ地区はフェンシングや射撃、馬術、近代五種などが行われる予定だ。
またサッカーの予選は、サンパウロなど5か所の都市の競技場で行われる。
開催される競技数は、ゴルフと7人制ラグビーが新たに加わり、28種目306競技となった。
リオデジャネイロの中心部や3つのゾーン間の交通アクセスは、海岸沿いの湾岸道路や橋の改善計画、都市交通システム(BRT)の新設、地下鉄延長(6駅新設)や路面電車網などの整備などで確保する計画である。
リオデジャネイロ組織員会では、五輪には206の国と地域から、10,500の選手が参加するとしている。
競技場の配置 図作成筆者
- オリンピック・パーク
新たに整備したメイン会場・オリンピック・パーク 出典 IOC
オリンピック・パーク 出典 Architekuture of the Games
オリンピック・パークの完成予想図 Municipal Olympic Company
- リオデジャネイロ五輪のオリンピック・パークは、中心地から西へ20キロメートル、ハカレパグア湖(Lagua de Jacarepaggua)に面したバーラ・ダ・チジュッカ(Barra
da Tijuca)地区に、広さ約118万平方メートル、東京ドーム25個分の広大な敷地に建設されている。体操競技場(Rio Olympic Arena)、自転車競技場(Velodrome)、テニス・センター(Olympic
Tennis Center)、そして3つの競技場で構成されるカリオカ・アリーナ(Carioca Arena1-2-3/ Olympic Halls)が整備され、バスケットボール(Carioca
Arena1)、柔道、レスリング(Carioca Arena2)、テコンドー、フェンシング(Carioca Arena3)の競技が開催される。そしてハンドボール競技場(仮設
Future Arena)、水泳競技場(水球も開催)(Olympic Aquatics Stadium)の11の競技会場や、IBC/MPC、選手村(Athletes
Accommodation 約1万室 1万8000人宿泊可能)、スポーツ研究所、ウエルカム・センター、事務棟、駐車場なども整備される。整備経費は、約25奥レアル(約900億円)
パーク内には、既存施設として、2007年のパン・アメリカン競技大会開催で建設された室内競技場(現HSBC Arena)があるが、これを改修し、オリンピック・アリーナ(Rio
Olympic Arena)として、五輪の体操、新体操、トランポリンの競技場として使用する。五輪後はスポーツ関連のビックイベントや文化イベント、コンサートなどに利用する計画で、施設の管理はリオデジャネイロ市が担当する。
また同様にパン・アメリカン競技大会で建設されたアクア・パーク(Maria Lenk Aquatic Park)は小規模な改修が行われ、リオデジャネイロ五輪の飛び込みとシンクロナイズド・スイミング、水球の競技場として使用される。
このオリンピック・パークの敷地は、かつてカーレース場(Jacarepaguá Race Track)があったが、デオドロ地区(Deodoro)に移転させて新たに建設した。
9つの競技会場が整備されるオリンピック・パークでは、オリンピックは、バスケットボール、柔道、テコンドー、レスリング(グレコローマン・フリースタイル)、ハンドボール、テニス、自転車、飛び込み、水球、競泳、シクロナイズ・スイミング、体操、新体操、トランポリンの16競技種目が開催され、メディア施設(IBC/MPC)やメディア用ホテルも建設される。
またパラリンピックは、車いすバスケットボール、ラグビー、サッカー、ボッチェ、柔道、バレーボール、ゴールボール、車いすテニス、自転車、競泳の10競技種目が開催される。
出典 Architekuture of the Games
- 民間パワー活用 公民連携スキーム(PPP)
- オリンピック・パークの整備プロジェクトは、公民連携スキーム(Public-Private Partnership /PPP)で行われ、入札が行われた。その結果、建設会社3社(Norberto
Odebrecht / Andrade Gutierrez、Carvalho Hosken)の共同企業体、“Rio Mais Group”が受注した。
PPPスキームでは、競技場の建設費は、国の財源で負担し、五輪開催後は施工を担当する“Rio Mais Consortium”が運営を請け負うことが決められている。
五輪の施設整備を担当するリオデジャネイロ都市開発公社やPPP事務局は、PPPスキームに基づき、“Rio Mais Group”を指導・監督して、プロジェクトを推進する。
但し、3つのアリーナで構成されるカリオカ・アリーナ(Carioca Arena/ OTC Halls)とIBC/MPC、メディア用ホテルは、 “Rio
Mais Consortium”が、建設費も負担して施工し、五輪後は運営を担当する。“Rio Mais Consortium”が負担する経費は合計1,678万レアル(約528億円)としている。
建設費は政府や開催都市が負担し、五輪開催後の運営を委託するPPPスキームとは切り離して、コマーシャル・ベースで施設を建設することで、国や開催都市の負担を軽減させるスキームである。
五輪開催後は、オリンピック・パークに新たに建設される競技施設、カリオカ・アリーナ(Carioca Arena)やテニス・センター、ベロドーム、水泳競技場(Maria
Lenk Aquatic Park)は、オリンピック・トレーニング・センター (COT)として再編成され“Rio Mais Group”が運営することになる。
当初のスキームで管理・運営を請け負った“Rio Mais Consortium”は2016年に資金難を理由に営業停止、所有者のリオデジャネイロ市は新たに管理・運営企業を募集したが、応募者はなく頓挫、管理・運営はスポーツ省(国)に移された。しかし、月約250万レアル(約9000万円)にも上る維持経費が捻出できず管理が十分dきず廃墟化している。リオデジャネイロ五輪の「負のレガシー」の象徴となった。
- マラカニアン・スタジアム Maracanã Stadium 開会式・閉会式 サッカー
- リオデジャネイロ北部に位置するマラカナン地区は、「ブラジル・サッカーの神殿」とも言われるマラカナン競技場と、リオのカーニバル会場となるサンボドロモという、ブラジルで最も有名な観光地で知られる。これら2カ所は、五輪とパラリンピックの開会式・閉会式やサッカーが開催される。サンボドロモはアーチェリー、マラソンのスタート・ゴール地点となる。
Maracanã Stadium 出典 IOC
- 世界的にも有名なサッカー・スタジアム。約7万8千人の観客を収容し、五輪のハイライトである開会式・閉会式の会場となるほか、サッカー男女の決勝戦も行われる。1950年に竣工、観客収容数、20万人の巨大スタジアムだった。同年に開催されたサッカーW杯の決勝リーグ最終戦で、ブラジル代表がウルグアイ代表に敗れた「マラカナンの悲劇」の舞台として知られている。1992年のブラジル全国選手権決勝戦では、スタンド落下事故が発生し、観客席を約8万席に改修する工事が行われた。2014年のサッカーW杯に合わせて4憶ユーロ(約480億円)かけて大リノベーションが行われた。Rio2016では決勝戦で開催国ブラジルとドイツが対戦、PK戦にもつれ込み、5人目のキッカー、ネーマールが決めて勝利して優勝、「マラカナンの歓喜」と呼ばれた。
Maracanã Stadium 出典 Rio2016
- 廃墟化したマラカナン・スタジアム
- マラカナン・スタジアムは、所有者であるリオ州がスタジアムを管理する民間の会社を公募し、「コンソルシオ・マラカナン )」(建設企業が中心に設立したコンソシアム)が、1億8,000万レアル(約65億円)で2013年5月より35年間の運営権を獲得した。2014FIFAワールドカップ開催に際し、約13億レアル(約468億円)をかけて全面改修も行われた。その後、2016年リオ大会開催のため、2016年3月からコンソルシオは同大会組織委員会へスタジアムを貸与した。しかし、大会終了後の同年9月、組織委員会がコンソルシオにスタジアムを返還したところ、大会開催のために改修された部分が元通りになっておらず、「契約違反」としてコンソルシオ側は受け取りを拒否した。組織委員会は約2億レアル(約72億円)の負債を抱えており、スタジアムの改修費用を捻出できないままでいる。またスタジアム運営者、リオ州政府、オリンピック組織委員会の間で100万ドルの未払い電気料金と会場管理をめぐる紛争も勃発、放棄された状態となり、観光客の立ち入りが禁止されている。ピッチの芝は枯れて茶色になり、不法侵入者によってスタンドの座席が約7,000席壊されたり、事務所の備品などが盗まれるなどの問題が起きて「廃墟化」した。マラカナン・スタジアムは2016年以降、約11ヵ月もの間サッカーの公式試合を開催することができず、地元のファンを激怒させた。結局、2017年4月、リオの地方裁判所が「組織委員会にはスタジアムの設備をすべて元通りにして返却する義務がある」という判決を下し、組織委員会はさらなる出費を強いられる。コンソルシオも、過去3年足らずの間に多額の損失を計上しており、スタジアムの運営権を他の会社に譲渡しようとした。しかし、2019年のコパ・アメリカ2019大会を開催、国内リーグ定期戦を開催するなど、サッカースタジアムとして現在は復活している。
枯れて茶色になったピッチの芝 出典 The Guardian
出典 The Guardian
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- サンボドロモ Sambódromo アーチェリー マラソンのスタート・ゴール地点
リオのカーニバルではパレード会場となるサンボドロモ。五輪に向けて改修し、観客席に挟まれた約600メートルのカーニバル・パレードコースは、アーチェリーの会場となるほか、マラソンのスタート、ゴール地点としても使用される。
- オリンピック・スタジアム Olympic Stadium 陸上競技 サッカー予選
- 2007年のパンアメリカン競技大会の際に建設したレガシー施設の一つ。五輪では陸上のトラック種目、フィールド種目のほか、サッカー1次リーグの試合にも利用される。五輪に向け、1万5千席の仮設スタンドを増設して収容人数を約4万5千人から約6万人に拡大。陸上のトラックも最新型に作り替えた。
Rio Estaio Joao Havelange(Athletics) Maracana地区 OCOG Rio2016
- Carioca Arena1/2/3 バスケットボール・柔道・レスリング・テコンドー・フェンシング
- オリンピック・パークの五輪公園の中心部にあり、3つの巨大なアリーナが建設された。多目的施設として建てられたアリーナ1は合計で3万8千㎡以上の広さがあり、アリーナ1では、バスケットボールや車いすバスケットボール、車いすラグビーの会場となる。アリーナ2ではレスリングと柔道、アリーナ3はテコンドーとフェンシングが行われる。閉会後は五輪トレーニングセンターとして利用される。
Carioca Arena1/2/3 Velodrome&Tennis Stadium Olympic Park(Bara地区) OCOG Rio2016
Carioca Arena1 (Basketball) Olympic Park(Bara地区) OCOG Rio2016
Carioca Arena2 (Judo/Wrestling) Olympic Park(Bara地区) OCOG Rio2016
Carioca Arena3 (Taekondo/Fencing) Olympic Park(Bara地区) OCOG Rio2016
- オリンピックのフェンシングとテコンドー、パラリンピックの柔道の競技会場となった「カリオカ・アレーナ3」は、大会後は全面的に改修されてスポーツ専門校となり、柔道、卓球、バレーボール、バスケットボールなど10競技のトップを目指す次世代のアスリート850人の練習と勉学の場にする計画だった。しかし、算不足で2017年2月時点でまだ改修工事が始まっておらず、工事開始の予定すら立っていない。
オリンピックのハンドボールとパラリンピックのゴールボールが行われたFuture Arenaは、解体されて4つの小学校や中学校が設立される計画で、工事の完成予定は2017年7~9月としていた。しかし、近くの施設と合わせて7800万レアル(約20億円)とされる解体費用の費用負担をめぐって、リオデジャネイロ市とコンソーシアムで対立し、長期間放置された。ようやく2021年3月ようやく工事が始まった。
- Velodrome 自転車(トラック)
- 大会開催のために新設、自転車(トラック)の会場となる。閉会後は、トレーニングセンターとして、ブラジルの競技力向上に役立てられる。
Velodrome Olympic Park(Bara地区) Roi Media Center
Velodrome Olympic Park(Bara地区) 出典 IOC
- ベロドロームが火災 4500万ドルの施設が使用不能に
火災は7月30日に発生した。何者かが作って空にあげた小さな気球が風に運ばれて、五輪公園内のベロドロームの屋根に落ちて引火。火は一気に燃え広がり、屋根の一部が内部のトラックに焼け落ちた。ブラジルではお祭りの際に、提灯(ちょうちん)のような小さな手製の気球を空にあげて祝うことがあるが、一方で、火災にならないよう、厳重に規制されている。
ベロドロームはリオ五輪の自転車競技のために建設され、総工費は4500万ドル(約50億円)。トラックはシベリア産の木材を敷き詰め、選手にも好評。五輪後はナショナルトレーニングセンターとしての使用が計画されていた。火災で、屋根の一部が黒こげ状態となり、施設の使用は長期間、不可能となった。
ベロドロームの火災は、五輪後のリオデジャネイロの苦境を象徴している。
- Olympic Aquatics Stadium 競泳・水球 仮設施設
- オリンピック・パークの中心に位置し、競技用とウオームアップ用の2つのプールがあり、競泳と水球の舞台となる。収容人数は約1万8千人。五輪のために新設したが、建物は一時的なもので、閉会後に解体し、五輪トレーニングセンターに統合される。
Olympic Aquatics Stadium (Swimming/Water Polo) Olympic Park(Bara地区) OCOG
Rio2016
Olympic Aquatics Stadium (Swimming/Water Polo) Olympic Park(Bara地区) OCOG
Rio2016
解体中のOlympic Aquatics Stadium The Gurdoan
- Olympic Tennis Centre テニス
- 五輪のために作られた、全16面の広大な会場。センターコートは約1万人を収容する。五輪ではテニス、パラリンピックでは車いすテニスと5人制サッカーの会場となる。閉会後、一部のコートは五輪トレーニングセンターとなり、テニスの国際大会でも使用される。
Olympic Tennis Centre Olympic Park(Bara地区) OCOG Rio2016

- Future Arena ハンドボール
- オリンピックではハンドボール、パラリンピックではゴールボールの会場となる。五輪のために新たに建設された約1万2千人を収容するアリーナである。大会終了後は解体し、4つの公立学校に生まれ変わる。
Future Arena (Handboll) Olympic Park(Bara地区) OCOG Rio2016
Future Arenaは、全面改修されて4つの小学校や中学校が設立計画。しかし、こちらも改修工事はまだ行われていない。以前の記事で紹介したとおり、小学校の完成予定は2017年7~9月であった。
- Maria Lenk Aquatic Center 飛び込み・シンクロナイズドスイミング・水球
Maria Lenk Aquatic Center((Diving/Synchronized Swimming/Waterpolo) Olympic
Park(Bara地区) OCOG Rio2016
マリア・レンク水泳センターはスポーツ複合施設「シティ・オブ・スポーツ・コンプレックス」の一部の水泳センター。2007年パンアメリカン競技大会の水泳、シンクロナイズドスイミング、ダイビングの競技会場として市が建設した。 Rio2016では、水球の団体戦、シンクロナイズドスイミングとダイビングの競技会場となる。観客収容数は約8,000人。Rio2016の立候補における主要なレガシー施設のひとつ。国際競技団体から再三に渡って要望されたにもかかわらず、経費節減で屋根は設置しなかった。競技開催直前の8月8日から9日、一夜にしてプールの水が緑色に変わり騒動になった。
Maria Lenk Aquatic Center (Diving/Synchronized Swimming/Waterpolo)) Olympic
Park(Bara地区) OCOG Rio2016
- Rio Olympic Arena 体操・新体操・トランポリン
- 2007年のパンアメリカン競技大会の際に建てられた施設の1つで、五輪では体操、新体操、トランポリンの会場となる。リオデジャネイロ最大のインドア施設で、さまざまなスポーツイベントやコンサートの会場として使われている。
Rio Olympic Arena(Gymnastics artistic/rhythmic/trampoline) Olympic Park(Bara地区) OCOG
Rio2016
- リオ中央体育館 Riocentro Pavilion
- 選手村に近接し、パビリオン2、3、4、6の4つの建物からなる。五輪では、パビリオン2は重量挙げ、3は卓球、6はボクシングの会場になる。2万3千㎡の広さを誇り、バドミントンの会場となるパビリオン4は、天井までの高さが12メートルあり、競技に適した施設になっている。
Riocentro Pavilion 出典 Rio2016
- Pontal ポンタル 競歩自転車・ロード
- ブラジルのソウル歌手チン・マイアの歌で有名なポンタルは、バーラ地区の西に位置し、美しいビーチサイドが広がる。五輪では、自転車のロード(タイムトライアル)と競歩のスタート、ゴール地点となる。パラリンピックの自転車(ロード)でも利用される。
Pontal 出典 Rio2016
- Hockey pitches ホッケー
Hockey pitches Deodoro地区 OCOG Rio2016
- Dedoro Olympic Park Whitewater Stadium カヌー・スラローム
- 主に自転車競技が行われるラジカルパークで唯一、水上競技のカヌー・スラロームの会場となっている。競技用の全長250mのコースと、200mのトレーニングコースがあり、2500万リットルもの水が流れている。
Whitewater Stadium(Canoe Slalom course) Dedoro Olympic Park and BMX Center
(back left). Along with the Mountain Bike course(MTB) Deodoro地区 OCOGRio2016
- 大会開催後、Dedoro Olympic Parkは、(総面積50万㎡)が巨大な多目的レジャーエリアとなり、地域住民150万人に水泳、バスケットボール、バレーボール、フットサル、マウンテンバイク、ローラースケート、ピクニック、バーベキューなどを楽しむ機会を提供計画だった。2016年9月、カヌー会場はプールとして一般に開放されが、プールの管理を任された会社が2016年末で営業を停止し、その後、新たな管理会社が見つかっておらず、以後は閉鎖されたままである。BMXの施設も、管理会社が見つからないため閉鎖されている。
- Dedoro Olympic Par(Deodoro Radical Park:ラジカルパーク) Olympic BMX Center BMX(レーシング)
- 主として自転車競技の会場となるDeodoro Radical Park(ラジカルパーク)内にあり、約4千㎡の敷地に、傾斜や鋭角のカーブがある400メートルのBMXコースが設けられた。大会後は選手育成の場として活用するほか、一般にも開放する。
Olympic BMX Center(Dedoro Olympic Park) Deodoro地区 出典 Rio2016
- Mountain Bike Center マウンテンバイクセンター 自転車・マウンテンバイク
- Dedoro Olympic Park(Deodoro Radical Park ラジカルパーク)にある丘陵、Monte Moriaに設けられたマウンテンバイク・コース(MTB)で、全長5.4キロメートル。地形を生かして作られ、急勾配の傾斜に加え、岩など自然の障害物も多い。
出典 Rio2016
出典 IOC
- Equestrian Centre 馬術
- 2007年のパンアメリカン競技会時に作られ、五輪に合わせて改修、拡張。射撃センターに隣接し、広さ約100万㎡の敷地内に、障害飛越やクロスカントリー走行のコースのほか、馬やトレーナーのための宿泊施設も備えている。
Equestrian Centre Deodoro地区 出典 Rio2016
- Olympic Shooting Center 五輪射撃センター 射撃
- 2007年のパンアメリカン競技大会の際に建設され、それ以降は選手の強化施設となっった。五輪に向けて改修し、決勝用に新たな射撃場が設けられた。閉会後は五輪トレーニングセンターとなる。
- Olympic Golf Course ゴルフ
- 112年ぶりに五輪競技に復帰したゴルフ。約1,900万ドル(約21億円)で建設され、大会終了後はブラジル・ゴルフ連盟が運営を委託されている。マラペンディ湖を望むコースが会場となる。その土地の地形や自然を生かした18ホールのコースで、大会終了後は一般に開放される。
Olympic Golf Course Barra地区 OCOGRio2016
- ブラジルではゴルフ愛好者が限られており、使用料も割高であることからゴルフのもともと利用者は少ない、大会後の管理を委託されているブラジル・ゴルフ連盟は利益を出すどころか管理費用すら捻出できないとしている。このため、管理が不十分でグリーンは荒れ放題、多くの野生動物が棲みつくなど管理状態は極めて悪化。今年に入ってからアマチュアレベルのゴルフ大会や初心者のためのゴルフ教室などが行われるようになっているが、巨額の投資によって世界最高レベルの競技会が行われるべく建設された施設が有効に活用されているとは言い難い。
荒れ果てたゴルフ場 出典 The Guardian
- Beach Valley Copacabana ビーチバレー
Beach Valley Copacabana Beach
- Marina da Glória Guanabara Bay セーリング
- グアナバラ湾に面したマリーナは、五輪に向けて改修が行われ、観客のための桟橋も一時的に設けられた。セーリングの会場となるこのエリアは、街の中心部にも近く、背後にはコルコバードの丘を見渡すことができる。
Marina da Glória(Sailing) 出典 Rio2016
Guanabara Bay (Sailing) Copacabana地区 OCOGRio2016
- 水質汚染問題が深刻な問題に発展
- セーリングやトライアスロン、ボートなどの会場となるコパカバーナ地区の湾岸部、グアナバラ湾の水質汚染が深刻で選手の健康被害が懸念され、競技の開催が危ぶまれている。
AP通信が7月に伝えた独自調査によると、2015年3月以降に競技会場で採取された水から、高い数値のアデノウイルスのほか、複数のウイルスや細菌も検出されという。
汚染の原因は下水処理整備の遅れだ。人口1000万人のリオデジャネイロの生活排水の7割近くがグアナバラ湾に最終的に流れ込むという。 さらに汚染に拍車をかけるのが、リオデジャネイロの貧民街。リオデジャネイロは世界でも有数の観光地だが、人口632万人の23%を占める143万人が貧民街に暮らしているという。ブラジルで最も貧富の差が大きい都市 でもある。貧民街では下水処理施設の整備はほとんど手が付けられていない。
- グアナバラ湾は「巨大なトイレ」と揶揄されている。 招致段階でリオデジャネイロ州政府は五輪開幕までにグアナバラ湾に流入する汚水の80%を下水処理できるようにすると公約した。この処理事業を支援しているのが日本の国際協力機構(JICA)で、現在四つの下水処理場が稼働している。 しかし、各家庭から処理場まで下水を集める配管の整備が遅々として進んでいない。リオ五輪組織委員会は昨年7月、公約としていた水質浄化が開幕まで不可能と認めている。
大量のゴミが海面を覆い尽くしているのも汚染の原因とされているが、リオデジャネイロ市では、湾内のごみを回収する「エコポート隊」を投入するなど窮余の対策に追われている。
水質汚染問題の解決は、ほぼ“絶望”とする見方が強い。
ゴミが散乱するグアナバラ湾 Antonio Scorza / Agência O Globo
- Fort Copacabana コパカバーナ要塞 オープンウオーター 自転車(ロード) トライアスロン
- 1914年に建てられた軍事防衛施設で、現在は観光スポットとなっている。水泳のオープンウオーターと自転車のロード種目、トライアスロンはここをスタート地点とし、コパカバーナの海岸線や海へレースを繰り広げていく。海岸沿いの通りには5千席の仮設観客席が設けられ、美しい風景も楽しむことができる。
Fort Copacabana 出典 IOC
- Rowers and canoeists Lagoa Stadium Lagoa Stadium ボート・カヌー(スプリント)
- 会場となるロドリゴ・デ・フレイタス湖は街の中心に位置し、キリスト像が建つコルコバードの丘をはじめ、美しい山並みが見渡せる。五輪では、ボートとカヌー・スプリントの舞台となる
Rowers and canoeists Lagoa Stadium Copacabana地区 OCOGRio2016
- 選手村
- Barra de Ti-jucaのビーチに建設。31棟の17階建ての高層高級マンションで、3064室、17,0950人が居住可能。大会開催時には最大16,500人のアスリートと大会関係者が宿泊する。五輪史上最大の選手村となった。大会終了後は、高級コンドミニアムとして販売する計画。
Olympic Village(選手村) Olympic Park(Bara地区) OCOG Rio2016
- 選手村は、17階建ての建物が31棟あり、大会終了後、マンションとして売り出された。販売価格は、78㎡の物件が約86万レアル(約3,100万円)、230㎡の物件が約253万レアル(約9,100万円)だが、2017年2月末までに3,064軒中300軒足らずしか売ず、6年経った2022年でも30%程度で、不良債権と化しつつある。販売不振の理由について、景気が悪いことに加え、価格が相場より高額のためとされれいる。
- 五輪メディア施設 IBC/MPC
国際放送センター(IBC)、メディア・プレス・センター(MPC)、メディア用ホテルがオリンピック・パークの建設された出典 Rio2016
完成したIBCの建物 Rio2016 OCOG
完成したIBCの建物の内部 Rio2016 OCOG
完成した国際放送センター(IBC)が組織委員会に引き渡される 出典 Rio2016
- IBC/MPC関連施設は、オリンピック・パークの中に建設され、総面積約110,000平方メートルを占める。その内、IBCが約85,000平方メートルを使用し、IBC
Main BuildingとIBC Officeが建設される。IBC Main Buildingは総床面積68,000平方メートル、2階建で高さ21メートル(1階12メートル、2階8メートル)の巨大な建物で、オリンピック関連施設の中で最大である。
IBCには、コントロール・ルーム(CDT:コントリビューション・ディストリビューション・トランスミッション)、伝送設備、収録設備、編集室、オーディオ・ブースなどが設置される。各放送機関(RHBs)向けの専用スペースとして、5,000メートルの放送機関エリアが12カ所、整備された。IBCのオペレーションを行うのはOBS(オリンピク放送機構)
IBC世界各国のオリンピックの放送権を持つテレビやラジオ局関係者(RHBs:Rights Holder Broadcasters)が約7,000人の参加が見込まれた。
一方、新聞、雑誌、インターネットなどのメディアが取材拠点とするMPC(Main Press Center)はIBCに隣接して設置され、競技結果などの情報提供をするインフォーメーション・デスクやメディア席や電話、インターネットなどが整備され、約6000人が参加予定だ。
IBC/MPCの共用施設として、会議室、レストラン、銀行、郵便局、トラベル・エージェント、コンビニなども設けられる。IBC/MPCは、24時間体制で運営される。
IBC/MOCに併設してメディア関係者宿泊用の400室の国際ホテルも建設される。
2015年11月8日、IBCの建物が完成し、建設を進めていたリオデジャネイロ市からリオデジャネイロ五輪組織員会に施設が引き渡された。以後、IBCのシステムを担当するOBS(Olympic
Broadcasting Services )がシステムの設営作業を開始する。
- 五輪初の民間資金でIBC/MPCを建設
- IBC/MPC関連施設の整備は、オリンピック史上初めて政府の財源を使わない画期的なスキームで行われる。政府資金は使用しない。
財源は、公民連携スキーム(Public-Private Partnership /PPP)の民間資金で賄わられ、大会終了後の運営も、民間に委ねられる。このプロジェクトは競争入札にかけられ、受注した民間の建設会社が、財源を確保して、建設工事を行い、五輪後の運営の責任を持つ。
当初計画では、IBC/MPCの建設費は、全額PPPスキームで民間企業が負担する予定だったが、空調設備や発電機の工事で巨額の経費増が発生し、リオデジャネイロ五輪組織員会が空調設備の2億レアル(約76億円)、州政府が4000万レアル(約15億円)を新たに負担することで合意した。
その結果、現在のIBC/MPCの総建設費は、総額6億4000万レアル(現在の為替レート 約242億円)膨れ上がり、その内PPP(Package
of Public-Private Partnership)スキームで民間企業の負担額は約4億レアル(約152億円)、組織委員会と州政府の負担額が2億4000万レアル(約90億円)となっている。
建設費を巡っては難題が次々と発生しているが、基本的にIBC/MPCのレガシーは、PPTスキームで担保されるのである。巨額の経費が必要で、巨大な施設となるIBC/MPCは、建設費の負担と大会後の施設をどう維持するのかが重要な課題である。リオデジャネイロ五輪の計画では、この課題をPPPスキームを採用することで解決しようとしている。
リオデジャネイロ五輪のIBC/MPCは、五輪開催後、改装して国際会議センターや展示ホール、エギジビション・ホールなどで利用するとしている。五輪開催後の運営を担う“Rio
Mais Consortium”の手腕が問われている。
メディア・ホテル Rio2016 OCOG
- リオデジャネイロ五輪 開催経費 荒療治支出3割削減
- リオデジャネイロ五輪組織員会(OCOG)の予算は、合計28億2000万ドル(約3380億円)で、これには投資的な経費は含まれていない。
主な支出は、競技場運営経費が6億8500万ドル(約822億円 約24%)、運営人件費3億4200万円(約410億円 約12%)、技術費4億8800万円(約586億円 17%)、予備費2億4400万ドル(約293億円 9%)などである。
収入は、トップ・スポンサーシップ収入が約31%、国内スポンサーシップ収入が約20%、入場券販売が約14.4%などとしている。
なお、公的機関は、入場券の価格が余り高額にならないように抑制するためやマーケッティングの促進のためにOCOGの経費の約25%の補助金を拠出することを決めている。
リオデジャネイロ五輪組織員会(OCOG)の経費に含まれていない投資的経費総額は111億ドル(約1兆3320.億円 382億レアル)で、この内、空港や道路、鉄道の交通インフラ整備に55億ドル(約6600億円)、環境整備に12億ドル(約1440億円)、電力整備に7億7000万ドル(約924億円)、セキュリティに8億1300万ドル(約976億円)としている。
さらに競技場整備に4億79000万ドル(約575億円)を負担し、この内、選手村建設費に4億2700万ドル(約512億円)、メディア・ビレッジ(メディア用の宿泊施設)に8億1200万ドル(約974億円)、IBC/MPCに2億300万ドル(約244億円)を充当するとしている。(出典 リオデジャネイロ五輪招致ファイル)
- リオデジャネイロ五輪組織委、支出を3割削減へ
- リオデジャネイロ五輪組織委員会は、開催経費が36億ドル(約4320億円)を超えないための措置として、支出を最大30%削減することを決めた。ただし、パラリンピック含め50種目・参加選手1万5000人に及ぶ競技イベント開催には影響させないとしている。
組織委の広報担当マリオ・アンドラーダ(Mario Andrada)氏は、ブラジル国民は過大な支出を許さないだろうと指摘し、 「もはや派手にお金を使える時代ではない」とし、「経費を節約する工夫が必要だ」と述べた。
組織委の予算は民間の資金で賄われており、競技場やインフラ整備などの投資的経費は含まれない。また、予算超過分の“赤字”をブラジル政府が補填する責務はない。
オリンピック各競技の入場券販売は低調で、合計500万枚のうち現時点でわずか200万枚が販売済みとなっている。
アンドラーダ氏は、「財布のひもを締めなければいけない。人々は贅沢や過剰な支出に腹を立てる」と語った。
■リオデジャネイロ五輪組織委の費用削減の内容
・開会式―3時間半に及ぶイベントの費用を削減。2012年ロンドン大会の1割になる予定
・プロモーションビデオはすべて内部の制作に
・入場券のオンラインくじを中止。すべてリボ払いが可能な公開販売に
・オリンピック施設の恒久的建築を減らし、テント活用を促進
・テストイベント(プレ五輪)での設備を削減
・参加者への英語レッスンなど、ボランティア・プログラムを当初予定の7万本から6万本に削減見通し
(出典 2015年10月6日 BBC ニュース)
- 膨大な赤字を抱えたリオデジャネイロ五輪組織委員会
- 大会組織委員会は深刻な問題を抱えており、いまだ解散できない状況にある。大会運営を通じて膨大な借金を抱えており、その返済が完了していない。
216年リオ大会を誘致する際、ヌーズマン組織委会長は「IOCは開催国に財務保証を求めており、ブラジル政府も了承したが、これは形式的なもの。我々は絶対に赤字を出さないし、国にも州にも市にも一切迷惑はかけない」と確約していた。しかし、大会が終わった直後に約2億レアル(約72億円)の負債があり、その後、返済を続けてきたものの、2017年4月時点で、まだ約1億レアル(約36億円)の負債を抱え、返済計画は頓挫している。組織委員会は国際オリンピック委員会(IOC)に救済を求めたが、IOCはこれを拒否した。
- リオデジャネイロ五輪の全体の開催経費は410億レアル(1兆400億円)に達した。当初計画では280億レアル(約7100億円)、130億レアル(3300億円)も増加した。増加した理由は、無理な支出と杜撰な計画よるものが大きい。後利用が定まらずに放置された施設の管理費が膨らんだことも原因とさrている。開催都市のリオデジャネイロ市だけでなく、ブラジル政府とリオデジャネイロ州の財政も逼迫させた。南米初の開催となるリオデジャネイロ五輪、結局「負の遺産」に転落した。
- 開催経費の約64%がレガシー(未来への遺産)に 五輪開催への取り組み姿勢は意気軒昂
オリンピック・パーク完成予想図 Rio2016 OCOG
混迷を深めるブラジルだが、五輪開催への取り組み姿勢は意気軒昂である。
リオデジャネイロ五輪組織委員会は、リオデジャネイロ五輪の開催経費、382億レアル(約1兆2200億円)の64.4%の246億レアル(約7900億円)がレガシー(未来への遺産)のために使われ、レガシー・プロジェクトは、2009年に提出した招致ファイルと比べて、17から27に増加したとしている。
IOCから賞賛されたレガシー・プロジェクトもある。オリンピック・パークの建設するハンドボール競技場は、改築されて4つの学校になる。ほかの競技場は、アスリートのトレーニング・センターや市民のレクレーション施設、国際会議場、展示ホール、イベント開催施設に改装し、レガシー(未来への遺産)とする計画である。
リオデジャネイロのパエス市長は、リオデジャネイロ五輪はこれからの五輪の“手本”になるべきだと話した。
「リオデジャネイロはやらなければならない多くの課題がある。しかし、オリンピック開催は念願だったリオデジャネイロの変革をもたらすだろう。150キロメートルの都市交通システムBRT、Porto
Maravilha、スイミングセンター、20キロメートルの地下鉄である。公的財源を使い過ぎないようにしよう! たくさんのレガシーを人々に残そう! 負の遺産(white
elephants)を作らないようにしよう! 私たちは、オリンピック開催都市の“手本”になる」と述べた。
リオデジャネイロ五輪の開催で、次世代にレガシー(未来への遺産)を残そうという強い意気込みがうかがえる。
2020年東京オリンピック・パラリンピックは、レガシー(未来への遺産)として何を残そうとしているのだろうか。
2016年、正念場を迎えている。
(「月刊ニューメディア 2016年2月号 掲載 加筆)