
ミラノ・コルティナ冬季五輪2026 選手村(ミラノ ポルタ・ロマーナ) 出典 Milano Cortina2026
- オリンピック“選手村” Olympics Village
- オリンピック大会では、夏季五輪では約2万人、冬季五輪では約1万人の選手や大会関係者の宿泊施設として、毎回、オリンピック選手村 (Olympics
Village)が設置されるのが特徴である。選手村は開会式・閉会式が開催されるオリンピック・スタジアムと並んで、大会の“象徴”とされている。
国際オリンピック委員会(IOC)では、選手村に参加アスリートが共に宿泊して、アスリート同士の交流を深めることで、オリンピック精神の“連帯”(Solidarity)を築き上げるツールとして、選手村の設置に力を入れている。Paris2024選手村(サンドニ) 出典 Paris2024
Paris2024選手村(サンドニ) 出典 Paris2024
- Paris2024選手村
Paris2024では、選手団と大会関係者の宿泊施設となるオリンピック・パラリンピック選手村が、サン・ドニ(Saint-Denis)に整備され、82棟、約7200室が建設された。
大会開催中はオリンピックではアスリート10,500人や大会関係者、約14,250人、パラリンピックでは約9,000人を収容した。毎日最大6万食の食事が提供され、常時利用可能なトレーニングエリア、フィットネスセンター、診療所なども設けられた。
選手村の建設費は約 20 億ユーロ (22 億ドル 約3200億円) で、70%は不動産開発業者による投資だが、公的資金から 6 億 4,600 万ユーロ (7 億ドル 約100億円)が拠出された。
大会終了後は2220戸以上の一般市民用の住居と770戸以上の高齢者や学生、低所得者層向けの住居が設けられ、医療施設や学校も整備されて約6000人が暮らすニュータウンとなる。また約6000人が働くオフイス・スペースも整備される。最初の居住者は 2025 年春に入居する予定だ。
選手村の設置されたエリアは工場や発電所が集積した「産業荒廃地」とされ、低所得層の労働者が多く住む開発がパリ市内で遅れていた地域で、大会開催を契機に再開発してParis2024のレガシーにする。東京五輪2020選手村の部屋 簡素な内装
- 東京五輪2020選手村
東京2020の選手村は臨海部の晴海地区に、14階から18階の宿泊棟21棟などが建設された。居住スペースは約3800室、ベッド数はオリンピック時1万8000台、パラリンピック時8000台とした。
建設費は、1057億円(再開発整備費[用地整備]約540億円、宿泊棟内装費約500億円)を東京都が負担し、三井不動産グループの開発総工費は約540億円とされている。
大会後、選手村のエリアは再開発されて6000人が住むニュータウン、晴海フラッグ(HARUMI FLAG)に衣替えする。北京冬季五輪2022(北京)
- 北京冬季五輪2022の選手村
北京冬季五輪2022の選手村は、開会式・閉会式、スケート競技などが行われる北京、アルペン、ボブスレー・リュージュ競技が行われる延慶、ジャンプ競技やスノーボード競技が行われる張家口の三カ所に設けられた。
この内最大の北京の選手村は北京の国家オリンピックスポーツセンターの南側に、9階建てが20棟(総建築面積33万平方メートル)建設され、開催期間中にはオリンピックでは2338床、パラリンピックでは1040床を準備する。選手用の診療所や食堂などのサービス施設も整備される。
このエリアには、 9階建てが20棟の他に、6階建てが22棟、特別居住者サービスセンターが3ヶ所、居住サービスセンターが9ヶ所が建設され、巨大なニュータウンとなる
五輪終了後は、北京市人材公共賃貸住宅として活用され、首都機能戦略の条件を満たす市民に貸し出される計画だ。
- 旧鉄道駅操車場跡地の再開発事業として建設されるミラノ・コルティナ冬季五輪2026選手村
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ミラノ・コルティナ冬季五輪2026選手村(ミラノ) 出典 Milano Cortina2026
ミラノ・コルティナ冬季五輪2026選手村(ミラノ) 出典 Milano Cortina2026
ミラノ・コルティナ冬季五輪2026選手村(ミラノ) 出典 Milano Cortina2026
- ミラノ・コルティナ冬季五輪2026の選手村は、ミラノ(Milano)、コルティバ・ダンベッツオ(Cortina d’Ampezzo)、プレダッツオ(Predazzo)、リヴィーニョ(Livigno)、ボルミオ(Bormio)、アンテルセルバ(Anterselva)の6カ所に設置される。パラリンピックではミラノ(Milano)、コルティバ・ダンベッツオ(Cortina d’Ampezzo)、プレダッツオ(Predazzo)の3カ所。この内、最大の約1000人の選手と大会関係者が宿泊するMilano選手村は、イタリア国鉄グループ、FSイタリアーネ(Gruppo FS Italiane)の旧鉄道駅跡地に約1億5000万ユーロ(約240億円)を投じて行う再開発地事業の複合施設として整備される。 この再開発事業は“ポルタ・ロマーナ” (Porta Romana)と呼ばれ、選手村はこのマスタープランの中核となる。
選手村 出典 Milano Cortina2026
- 選手村の建物は6棟、8階建で、高さは29メートル、延べ床面積は53,380平方メートル、大会期間中は約1000人の選手や大会関係者が宿泊する。
大会後は選手村の宿泊施設はミラノの約1000人の大学生向け学生寮に生まれ変わり、オリンピック・ビレッジ・プラザは、地上階に小売店、バー、レストラン、カフェが並ぶコミュニティ広場に生まれ変わる。広場には、ファーマーズマーケットや様々なコミュニティ活動に利用される。屋外エリアも設けられる予定だ。冬季五輪大会開催のレガシーに貢献ウする新たなモデルとしている。ミラノに拠点を置く不動産管理会社COIMAは、2億ユーロ(320億円)以上を投資して、この選手村を中心とする複合施設を管理・運営する。
- “ポルタ・ロマーナ”鉄道整備計画 Porta Romana
旧鉄道駅跡地 出典 OUTCOMIST
旧鉄道駅跡地 出典 OUTCOMIST
- 2020年、イタリア国鉄グループ、FSイタリアーネ(Gruppo FS Italiane)は、“ポルタ・ロマーナ”(Porta Romana)と名付けた旧鉄道駅跡地を開始した。この区画の再開発の入札が行われ、 都市開発のデベロッパー、COIMA SGRを中心に、Covivio、Prado Holding S.p.A、機関投資家が共同で設立した開発コンソーシアム、フォンド・ポルタ・ロマーナ(Fondo Porta Romana)が2020年に落札、翌2021年にマスタープラン策定を開始した。
マスタープランはDiller Scofidio + Renfroをはじめとする設計、エンジニアリング、建築会社で構成されるOUTCOMISTチームによって作成され、2022年11月に完了、フォンド・ポルタ・ロマーナはFSイタリアーネとの契約を締結し、この区画を1億8,000万ユーロ(約288億円)で購入した。- 再開発事業では、COIMAが後に学生寮となる居住施設とオリンピック村を開発し、Covivioがオフイス機能やサービスの開発を担当、主にパークのクォリティに焦点を当てているPrada Holding S.p.Aは、研究用の建物とその活動のためのオフイスを建設する。
再開発区域 緑色が選手村エリア 出典 Milano Cortina2026
- 再開発区画には、約29,570平方メートルの学生寮に加え、最終的には56,000平方メートルのオフイス、ホテル、小商業スペースや鉄道に隣接する区域にはマンション、公営住宅が建設される。
エリアには9万5000平方メートルを超える緑地が整備され、その大部分は広大な中央公園となる。
ポルタ・ロマーナの設計チームは、鉄道操車場の再開発の第一段階として、6棟の宿泊を備えた選手村の整備に焦点をあてていた。この最初の構想では、この選手村の複合施設を再開発の中核にすると同時に、ライト・トランジットの拠点となる必要があったという。
そして、2026年3月のオリンピック閉幕後のレガシー・ビジョンのより大きな設計課題が浮上した。最初のフェーズの選手村として機能するだけでなく、その後、ミラノの街の一部として長く機能するエリアとしてどのように作れば良いのかがテーマだった。 複合施設と敷地全体を、最終的に「街の二つの部分を再び縫い合わせる」役割を果たすような形で整備する必要があった。旧操車場の建物 出典 Porta Romana
修復された旧操車場の建物 出典 Porta Romana
修復された旧操車場の建物 出典 Porta Romana
- 古い操車場のうち2棟を修復 歴史的建造物を保存する画期的な再開発プロジェクト
- 重要な選択の一つは、3棟の古い操車場のうち2棟を修復して残すことだった。この再開発計画を立案したSkidmore, Owings &
Merrill LLP (SOM)社の幹部、コーリン・クープ(Colin Koop)氏によると、これは難しい決断ではなかったという。 「迷うことがない、“美しい選択”だった。古い操車場は、当時の時代やその場所の歴史を象徴していると強いインスピレーション感じた。
経費はかさんだ。両方の修復にはかなりの資金を投入しなければならなかった。しかし、このプロジェクトが単なる巨大な建設工事ではなくなり、 6棟の新しい建物が2棟の歴史的建造物の隣に建てられるという画期的な再開発プロジェクトとなった」と語っている。
新しく建設される建物は、その形状や規模、材質において、歴史的建造物からインスピレーションを得ている。モジュール設計、プレハブのファサードパネル、合理化された建設シーケンスにより、建設中に排出される炭素量が大幅に削減される。
地上階の商業スペースとコミュニティスペースは、イタリア全土の歴史的な宮殿が何世紀にもわたって改造されて使われてきたように、時間の経過とともにさまざまな用途に対応できる柔軟性を備えて設計されている。上層部では、垂直に植えられた植物が日陰を作るドラマチックなテラスが建物間の橋渡しとして機能し、学生たちの集会スペースや屋外学習室として利用され、生命感を与えている。中庭は、学生居住者にリフレッシュできる屋外スペースを提供するとともに、地域の気候変動への耐性にも貢献するとしている。Porta Romana 出典 Porta Romana
Porta Romana 出典 Porta Romana
- ⇒ミラノ・コルティナ冬季五輪2026 競技会場 最新情報